NEW GENERATION, NEW WAVE
ABOUT OCT, 2024
有名チェーン店のメニュー作りから学校給食まで,
「T’s レストラン」 が食を通じて伝えたいこと。
LIFE STYLE Sep 27, 2021
“ミートフリーマンデー(Meat Free Monday)”とは、ポール・マッカートニーとステラ・マッカートニーが提唱する地球環境保護を目的としたキャンペーン。週に1度、月曜日だけでも肉を食べない生活を皆が意識することで、畜産飼育における穀物需要の増加とそれに伴う森林破壊や砂漠化、さらには温暖化の要因でもあるメタンガスの発生を少しでも防ごうという啓蒙活動でもある。SWAG H.ではこのメッセージに共鳴し、毎週月曜日にベジタリアニズムやヴィーガニズムをはじめとする関連ニュースをお届けする。第20回は先日、オープン12周年を迎えたばかりの自由が丘にあるヴィーガン専門店「T’s レストラン」をピックアップ。
2009年のオープン以来、「T’s レストラン」が最も大切にしているのは“健康”であるということ。こちらのお店を作ったのも“食を通じて健康の大切さを発信すること”が目的とあって、そのシンプルかつ普遍的な理念はオープンから12年もの間、変わることがない。オーナーを務める下川祠左都(まさこ)さんは、以前は焼き肉やステーキも大好きなノンベジタリアンであったが、知人が病気になったことをきっかけに自身と家族の食生活を見直すことになったという。そこから、動物性素材を使わない料理を楽しみながら試行錯誤した結果、家族の食卓にはオリジナルのヴィーガンメニューが並ぶまでとなった。ちなみに、本連載に登場するシェフの中には身近な人の病気をきっかけにベジタリアンやヴィーガンに目覚めたという人も多い。ただ、下川さんが彼らと決定的に違うのはプロの料理人ではなくそれまで専業主婦だったことである。当時、ようやく子育ても一息ついて「さて、これから何を生き甲斐にしたらいいのか?」と考えていた下川さんは、食を通じて健康の大切さを伝えることこそが自分に課せられた道だと決意。そこから様々な偶然が重なり、人との出会いが繋がったことで、新たな人生の目標を心に決めてからわずか4ヶ月後には現在の「T’s レストラン」をオープンさせることになった。この有機的な連鎖が生んだサクセスストーリー(その奮闘ぶりはむしろ細腕繁盛記というべきか)に関しては、ぜひ公式サイト内にある「T’s Story」でご一読頂きたい。そこには、自分自身のため、そして誰かのためにという純粋な想いと熱い情熱を持った1人の女性の逞しくも美しい姿を見ることができる。ヴィーガン専門店が日本ではほとんどなかった時代に手探りをしながらすべてホワイトソースやデミグラスソースを手作りしていた苦労はやがて実を結び、現在では、「T’s レストラン」をはじめ、姉妹店の「T’s たんたん」を5店舗構えるまでとなった。
下川さんによれば、「T’s レストラン」が目指しているのは街のファミリーレストランだという。和食や洋食はもちろんのこと、ラーメンや餃子などの中華料理にピザやラザニアのイタリア料理、さらには各国のスイーツまでが揃ったお店。訪れた人の誰もがそれぞれ食べたいものを食べられる環境が理想であり、そんな笑顔溢れる空間を目指している。店頭に立つ下川さんのもとには、お肉が大好きなお客さんから「T’s レストラン」での食体験を経て、時々ヴィーガンの食事を取り入れるようになったという嬉しい声が届くこともあり、そんなきっかけが生まれる入り口のようなお店でありたいとも考えている。
世界中の人たちが食の背景を気にすることなく楽しめる“SmileVeg(=みんなでおいしく、楽しく、カラダが喜ぶ料理)”を掲げる「T’s レストラン」では、肉、魚介類、卵、乳製品等の動物性食材を一切使わない。信頼の置ける生産者から仕入れた旬の野菜と豆乳などを組み合わせた料理の数々は、本物の肉や魚と変わらない見た目や食感、そして味への感動をもたらす。また、自然食品由来のメニューには、菜食主義だけでなくアレルギーや病気などで食事制限のある人にも存分に楽しんでもらいたいとの想いがある。実際に、乳製品アレルギーを持つ子供が初めてグラタンを食べて喜んでいる様子や、その親御さんから喜びの感想を聞くたびにこのお店を開いて良かったと実感するのだという。
フードメニュー以外にもコレステロールゼロのスイーツも人気が高い。季節の果物を使ったパフェや、ガトーショコラにチーズタルトなどの多彩なヴィーガンスイーツは、卵や乳製品のアレルギーを持つ人など誰でも美味しく味わえる。また、誕生日などのお祝いの席にも最適なアニバーサリーケーキにも対応している。事前予約(3日前)が必要だが、テイクアウトも可能なので特別な日には特製のヴィーガンケーキでお祝いししてみてはいかがだろうか。
メニューの多くはテイクアウトに加え、自社のデリバリーを含む出前館やWolt(ウォルト)など各社の宅配サービスを利用して楽しむことができる。また、動物性食材及び化学調味料を一切使用せず、ヘルシーなノンフライ麺を使った植物性100%のオリジナルヴィーガンカップ麺をはじめ、カレーや担々麺などの人気メニュー、さらには家庭での調理用として大豆ミート、野菜だし、ホワイトソースなどもオンラインショップで販売している。
「T’s レストラン」のメニューを味わえるお店は他にもある。2011年に1号店をオープンし、今年10周年を迎えた姉妹店の「T’s たんたん」もそのひとつだ。こちらではシグネチャーとなる5種類の担々麺をはじめ、スーラータンメンやタンメンなどの麺類や、大豆ミートを使った餃子などのサイドメニューを展開。時間がない時でも手軽に本格的なヴィーガンメニューを食べられるとあって、ランチタイムを中心にいつも多くのお客さんで賑わっている。
下川さんが第2のライフプランとして描いた、健康の大切さを食を通して発信するという真摯な想いは自身が関わるお店を飛び越えて、さらなる展開を見せている。今月からは「タリーズコーヒー」で提供されるヴィーガン仕様のラザニアとタコライスのメニュー開発に協力した。また、日本各地で少しでもプラントベースのメニューを提供するお店が増えて欲しいという考えから、「T’s レストラン」で使っている食材を提供。2015年からは学校給食の場でもヴィーガンを含めた食の多様性を知るだけでなく、実際に子供たちにも体験して欲しいとの想いから関係施設に食材提供を続けている。宗教や民族の様々な食事の禁忌や嗜好を学ぶことで、その先にある寛容的な社会の重要性にまで理解がおよぶようになれば、それは文字通りの“食育”の素晴らしさといえるのではないだろうか。自分以外の動物や環境への配慮に目を向けたのがヴィーガニズムなら、自身のお店だけでなく地域社会や日本全体を広く見渡した下川さんと「T’s レストラン」のアクションは、まさにその精神を体現しているといっても間違いない。
東京都目黒区自由が丘2-9-6 Luz自由が丘 B1
TEL 03-3717-0831
ts-restaurant.jp
エキュート京葉ストリート店
東京都千代田区丸の内1-9-1 「JR東京駅 改札内」エキュート京葉ストリート内(1F)
TEL 03-3218-8040
エキュート上野店
東京都台東区上野7-1-1 「JR上野駅 改札内」エキュート上野(3F)
TEL 03-5826-5618
池袋店
東京都豊島区南池袋1-28-2 「JR池袋駅 改札内」中央コンコース
TEL 03-5958-0375
*成田空港第一・第二は現在休業中。
foods.jr-cross.co.jp/ts-tantan