NEW GENERATION, NEW WAVE
ABOUT FEB, 2025
仲間たちと米や野菜を育て,持続可能な暮らしを
実践する,いすみ市の里山にある複合型プレイス。
LIFE STYLE Jul 3, 2023
“ミートフリーマンデー(Meat Free Monday)”とは、ポール・マッカートニーとステラ・マッカートニーが提唱する地球環境保護を目的としたキャンペーン。週に1度、月曜日だけでも肉を食べない生活を皆が意識することで、畜産飼育における穀物需要の増加とそれに伴う森林破壊や砂漠化、さらには温暖化の要因でもあるメタンガスの発生を少しでも防ごうという啓蒙活動でもある。SWAG H.では、このメッセージに共鳴し、毎週月曜日にベジタリアニズムやヴィーガニズムをはじめとする関連ニュースをお届けする。第100回は、千葉県いすみ市にある複合型施設「BROWN’S FIELD(ブラウンズ フィールド)」内にある「RICE TERRACE CAFE(ライステラスカフェ)」をピックアップ。
JR外房線 長者町駅から徒歩45分、車では10分ほどの距離にある「ブラウンズ フィールド」。周囲を緑に囲まれたのどかな里山にあるこちらの施設は、マクロビオティック料理家として数々の著書を持つ中島デコ氏の住まいであり、今回紹介するヴィーガンカフェ「ライステラスカフェ」をはじめ、宿泊機能を備えた「慈慈の邸(Ji-Ji no ie)」やコテージ、撮影やイベントスペースとして使える古民家「サクラダコミンカ」、酵母パンとコーヒーの店「ACOUSTIC Bread and Coffee(アコースティック ブレッド アンド コーヒー)」が集まった複合型のライフスタイルプレイスである。10名ほどいるスタッフは、この場所に短期や長期など期間を決めて住み込みで働きながら、米や野菜を育て、調味料までも手作りする自給自足に近い形で持続可能な生活を営んでいる。
東京出身の中島氏は、元々都内でマクロビオティック料理家として活動していたが、5人の子供を育てるために無理して働かなければならない都会での生活に限界を感じており、子育てのためにより良い環境を求めて今から24年前にいすみ市に移住してきた。当初はここでお店を始める気などなかったものの、その暮らしぶりに興味を持った友人、知人が見学に来ることが増えていった。その際に「じゃあお茶でもどうぞ」という場所があったら良いのでは? ということから、なりゆきのようにカフェをオープン。さらに、有機農業を営むホストと、そこで手伝いながら学びたいというゲストを繋ぐロンドン発祥のNGO団体「WWOOF」のメンバーを受け入れたことをきっかけに、カフェ以外の施設や店舗を運営する現在の「ブラウンズ フィールド」という事業へと発展していった。
あらためて、「ライステラスカフェ」に話を戻そう。こちらでは、羽釜で炊いた自家製天日干し無農薬玄米と自前の畑で育てた旬の野菜、さらに手作りの調味料を使った心と身体に優しいヴィーガンランチとスイーツを提供。元々、鳥小屋として使われた建物をベースに、混合土を袋に入れて積み上げる環境負荷の少ない「アースバック工法」で改築し、2006年にオープンした。
また、「ブラウンズ フィールド」母屋から徒歩3分ほどの距離にある宿泊施設「慈慈の邸」でも料理を提供。丁寧に手作りした自家製のお味噌や素材本来の味わいを大切にしたシンプルながら滋味深い日本の朝食は、身体をゆっくりと目覚めさせてくれる。
「ブラウンズ フィールド」では、コロナ禍以降、短期ボランティアに応募する人が一気に増加した。これまでの常識や慣習が通用しないパラダイムシフトが起こった後では、「このままの経済社会でいいのだろうか、(自分は)縛られたままでいいのだろうか」と将来の人生設計に悩む人や、生きづらさを抱える人など、色々な人が何かを求めてこの場所を訪れたという。もちろん、すぐに答えや正解が出るとは限らないが、しばらくこの場所で暮らしていくうちに、みんな生きる力が徐々に湧いてくるのだと中島氏は語る。やや独断的な言い方にはなるが、生きる力=生命力や希望だけではなく、「草を採って食べても生きていける」というある種の諦念にも似た開き直りのマインドが、疲弊しきった心をぐっと楽にしてくれるからだろう。「ブラウンズ フィールド」を巣立った卒業生には、ここで気づきや学びを得て、全国各地で自分のお店を開いたり、持続可能な事業を展開する人も多いという。何もかも目まぐるしく変化し、それに対応していけない人たちは社会からこぼれ落ちてしまうような現代では、自分をゆっくりと見つめ直すことができるこんな場所が何よりも必要なのだ。
千葉県いすみ市岬町桑田1501‐1
TEL 0470-87-4501
brownsfield-jp.com