NEW GENERATION, NEW WAVE
ABOUT OCT, 2024
豚骨ラーメンブームの立役者が新たに手掛ける,
濃厚テイストが魅力のヴィーガンレストラン。
LIFE STYLE Oct 4, 2021
“ミートフリーマンデー(Meat Free Monday)”とは、ポール・マッカートニーとステラ・マッカートニーが提唱する地球環境保護を目的としたキャンペーン。週に1度、月曜日だけでも肉を食べない生活を皆が意識することで、畜産飼育における穀物需要の増加とそれに伴う森林破壊や砂漠化、さらには温暖化の要因でもあるメタンガスの発生を少しでも防ごうという啓蒙活動でもある。SWAG H.ではこのメッセージに共鳴し、毎週月曜日にベジタリアニズムやヴィーガニズムをはじめとする関連ニュースをお届けする。第21回は豚骨ラーメンブームの火付け役となった名店が手掛けるレストラン「ヴィーガンビストロじゃんがら」をピックアップ。
「ヴィーガンビストロ じゃんがら」は、その名の通り、1984年創業の人気ラーメン店「九州じゃんがら」が手掛けるヴィーガン専門店。九州発の豚骨ラーメンを東京で広めた先駆的な存在でもある同店だが、早くからヴィーガンメニューの開発、提供を行ってきたことを知る人は少ない。元々、観光地でもある原宿の駅近に店舗を構える「九州じゃんがら 原宿店」をはじめ、各店舗には近年、アジアや欧米はもとより世界各地からの観光客の来店が急増。しかし団体客の中には、食事の嗜好や宗教の戒律などで食べられるメニューがないこともあったという。食に対する背景が異なる者同士でもひとつのテーブルを囲むことが出来ないものか? と悩んでいたそんな折、同じようなタイミングで立て続けにオファーが届いた。ひとつは、インドネシアやマレーシアからの出店オファーであり、イスラムにおける食の規範“ハラール”の基準がより厳格な地で、豚肉を使わずに「九州じゃんがら」の美味しさを表現するという、新たな試みに挑戦することとなる。さらには、日本航空株式会社(JAL)の機内食として動物性食材、エキスを一切使用しないラーメンを開発するというやり甲斐のあるオファーが続いた。
そして、自分たちのラーメンの形を改めて模索することで、“誰もが同じテーブルを囲んで食事を楽しむ”という漠然とした願いが結実することを知り、アイデアを練り試行錯誤を重ねた結果、遂に数種類のヴィーガンラーメンが完成。「九州じゃんがら」全店のメニューに加えられると共に、2013年12月にはJAL特製「九州じゃんがら」ヘルシーラーメンの提供もスタートし、挑戦は大成功で終わった。
時は流れ、今年3月に満を持してオープンしたのが先述の「ヴィーガンビストロ じゃんがら」である。「九州じゃんがら 原宿店」の2階をリニューアルした店内は、フォレストグリーンの自然色をベースにしたスタイリッシュな空間で、晴れた日には神宮の森から日差しがたっぷりと射し込むのが自慢だ。この立地にも理由があり、「九州じゃんがら原宿店」の出店から35年。東京はおろか世界中に本場の豚骨ラーメンブームが起きるきっかけともなったこの地で、改めて1からヴィーガン料理を広めて行きたいという願いが込められている。
お店で提供されるメニューは、肉、魚介類、卵、乳製品、化学調味料、白砂糖を使用しない100%ヴィーガン仕様。これまでヴィーガンのメニューではあまりなかった、濃い味や濃厚系のメニューも数多く取り揃え、見た目はもちろん、演出を含めて時にはワイルドなテイストを提供することを意識している。そのため、ヴィーガン専門店と知らずに入店したお客さんからは「これはお肉じゃないんですか?」や、「(お肉ではないと)言われないと気付かなかったよ」と、いった驚きの言葉を聞くことも多い。業態としてはビストロを謳っているため、ラーメン以外にもグリル料理やハンバーガー、タイカレーなど多種多様なメニュー構成となっている。メニューの中には、グルテンフリーや、仏教で禁じられている場合もある五葷抜きの料理もあり、多様な食の嗜好への対応も十分。ディナータイムには、お酒に合うアラカルトメニューを多数用意するとあって、サントリー公認の生ビール「神泡超達人店」や「頂点ハイボール」は、メーカーお墨付となる品質最高ランク認定店の称号を持つなど、ドリンクメニューも充実している。
また、原宿という場所柄、カフェ利用(15時~)するお客さんのために、バラエティに富んだスイーツメニューを展開。スイーツの名店「ガトー・ド・ボワイヤージュ」が手掛けるプラントベースのヴィーガンケーキや、甘さ控えめの和スイーツ、自家製アイスなどを取り揃えているので、ショッピングの合間などひと息つきたい際には、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
「ヴィーガンビストロ じゃんがら」は、ヴィーガニズムに直結する環境問題や食料危機だけでなく、貧困問題やエネルギー不足、さらに今なお収束が見えない新型コロナウイルスなど、様々な危機的状況に直面する中で現在世界中で推進しているSDGs(持続可能な開発目標)への寄与を目指しているという。自分たちが出来る範囲、得意とする形で積極的に社会参加していく姿勢からは、フードビジネスに携わる者としての確かな矜持が伺える。海外からの来客が増えていく中で、誰もが同じ食卓を囲んで欲しいというシンプルな想いが、一杯のヴィーガンラーメンを生み出し、今や新たなヴィーガンレストランをオープンするまでとなった。そしてこの先、いつか訪れるであろう持続可能な社会に向けて「ヴィーガンビストロ じゃんがら」のストーリーは、連綿と繋がっていくことだろう。
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