NEW GENERATION, NEW WAVE
ABOUT OCT, 2024
盛り付けや包装に至るまで“デザインの力”が宿る,
グルテンフリー&ヴィーガンのこだわりスイーツ。
LIFE STYLE Jun 20, 2022
“ミートフリーマンデー(Meat Free Monday)”とは、ポール・マッカートニーとステラ・マッカートニーが提唱する地球環境保護を目的としたキャンペーン。週に1度、月曜日だけでも肉を食べない生活を皆が意識することで、畜産飼育における穀物需要の増加とそれに伴う森林破壊や砂漠化、さらには温暖化の要因でもあるメタンガスの発生を少しでも防ごうという啓蒙活動でもある。SWAG H.では、このメッセージに共鳴し、毎週月曜日にベジタリアニズムやヴィーガニズムをはじめとする関連ニュースをお届けする。第53回は、東京、南青山にあるヴィーガンレストラン「PARLOR 8ablish(パーラー エイタブリッシュ)」をピックアップ。
「パーラー エイタブリッシュ」の歴史は今から22年前に遡る。2000年に同じ南青山の地で「カフェエイト」としてスタートすると、2003年には「PURE CAFE(ピュア カフェ)」へと形を変え、現在の「パーラー エイタブリッシュ」がオープンしたのは2015年のこと。時代毎に場所や業態などは変わることがあっても、創業時の「カフェエイト」から現在に至るまでヴィーガンを軸にしたスタイルを貫いている。オーナーを務めるのは、クリエイティブディレクター/アートディレクターとして数多くの企業広告やブランディングなどを手掛ける川村明子氏。レストランを始動させるにあたり、本業であるデザインの仕事を主体とした会社「ダブルオーエイト」と合併して再出発したという経緯から、創立や立ち上げを意味する“Establish”と“Eight(8)”を掛け合わせた「8ablish」と名付けたという。川村氏が長年デザイン業界で培った経験や持って生まれたセンスは、レストラン経営にも多分に活かされており、お店のコンセプト作りに始まり、製品のパッケージや空間設計、さらにスタッフのユニフォームに至るまで、1からすべて彼女が手掛けたものである。そこには、デザインを妥協せずに表現することで、日本人にはまだ馴染みの薄いヴィーガンというライフスタイルの長所をヴィジュアルを通して伝えていきたいという想いが込められている。
ヴィーガンをより多くの人に届けたいという願いは、“Universal Pleasure for Everyone(からだ、地球、みんなにやさしい)”というコンセプトからも見て取れる。植物性素材のみで作られるヴィーガンメニューは、作る上での制限の多さゆえ、より多くの人が口にできるという側面がある。「エイタブリッシュ」では、アレルゲンなどの理由で“食べる”ということに対して制限がある人や、宗教上の戒律や禁忌を遵守する人も含めて、ありとあらゆる人が国や習慣、趣味嗜好などを超えてみんなでひとつのテーブルを囲んで食事を楽しんでほしいと川村氏は語る。
現在は軽飲食を中心としたパーラーを謳う「エイタブリッシュ」だが、特に目を見張るのがスイーツの充実ぶりだ。すべてのメニューが100%ヴィーガン仕様で、 卵、バター、ミルクなどの動物性食材はもとより、精製された白砂糖や添加物も一切不使用。また、約8割のお菓子は大麦、ライ麦、オーツ麦などを使用しないグルテンフリーでもある。フードメニューも含めて食材はできる限りオーガニックなものにこだわり、農薬や化学肥料を使わずに栽培された野菜や季節のフルーツ、米穀物をしっかりと吟味し、ひとつひとつ丁寧に作られているのが特徴だ。また、農家をはじめとする生産者や食材を取り扱うメーカーとのネットワークを活かして、生産から加工、流通に至るまで一貫して把握できるトレーサビリティが確立しているものを積極的に採用するなど、お店で使う素材の安心、安全には並々ならぬこだわりをみせる。
なお、本稿で紹介したグリーンカレーやグルテンフリーマフィンに加え、ヴィーガンアイスクリームや自家製グラノーラなどはオンラインストアでも購入できるので、興味のある人はオフィシャルサイトでご確認を。現在、青山のお店以外にも松屋銀座にあるテイクアウト専門店や富山店を展開しているので、そちらも併せてチェックしてみてはいかがだろう。
“デザインの力”を通して、ヴィーガンというカルチャーを日本に根付かせようと試みる川村氏と「パーラー エイタブリッシュ」。好きになる入口やきっかけが何であれ、それが人々の健康や地球資源の保護に繋がれば良いという大局的な視点は、ともするとストイックに陥りがちなヴィーガンの世界では新鮮に映る。また、自分が得意な事やできる範囲で社会に貢献するというシンプルな考え方は、ヴィーガンだけでなく様々な社会運動に寄与する上で重要な示唆を与えてくれるものでもある。“食”や“デザイン”で社会をよりよく変える「パーラー エイタブリッシュ」のチャレンジは、これからも続いていく。
東京都港区南青山5-10-17 2F
TEL 03-6805-0597
www.8ablish.com