鳥取県の山あいに位置する智頭町新田地区の学校｢新田サドベリースクール｣に通う子供たちと、そこに携わる大人たちの1年を追ったドキュメンタリー映画｢屋根の上に吹く風は｣が、10月2日(土)より公開される。

本作に登場する新田サドベリースクールは、対象年齢6歳から22歳を対象に子供たちの自主性を尊重した教育を目指すデモクラティックスクール(民主主義の学校)。2009年4月、智頭町に住む子育て中の親たちによって母体となる｢森のようちえんまるたんぼう｣が立ち上げられ、土日だけの週末型を経て2015年4月から現在の形となる平日毎日型の学校として開校した。本校のモデルとなったのは、アメリカ マサチューセッツにあるサドベリーバレースクールで、先生やカリキュラム、テスト、評価のない学校であり、子供たちの好奇心に沿った遊びや体験から学んでいくことを目指すものである。新田サドベリースクールは年齢によるクラス分けがないので、異年齢ミックスのコミュニティの中で子供も大人も対等に話し合い、お互いから学び合う関係が構築されていく。“民主主義の学校”と呼ばれるように、学校のルール作りから運営、予算、スタッフ(先生の代わりとなるサポート役の大人)の雇用等もすべて話し合いの場が設けられ、全員の同意のもと決定するのも特徴である。

本作は、そんな一見型破りにも思える“自分たちなりの理想の学び場”を追い求め奔走する子供と大人の姿を1年に渡り追った記録で、監督はこれまで親子を巡る数々のドキュメンタリーを製作してきた浅田さかえが務めた。浅田はひょんな出会いから単身で現地に臨み延べ300時間以上に及ぶ撮影記録から、浅田自身の人柄や等身大の眼差しが捉えたスクールのありのままの姿を映画作品としてまとめている。

“自由をめぐる、大人と子供の葛藤と冒険のドキュメンタリー”……これは公式サイトにある本作を紹介するキャッチフレーズでもある。決まった授業が行われることなく、朝からゲームや屋根作りに夢中になる子供たち。それを見守る保護者は子供とスクールを信じつつも、時に一抹の不安を覚え、地域住民から訝しげな視線を向けられることも。また、子供たち自身も楽しい環境に身を置きながらも、自分でやることを見つけなければ、ただ無為で退屈な時間だけが過ぎていくことで、“自由とは何だろう？”と言う根源的な気付きを得る。スタッフも子供たちの自主性を信じて、“黙って見守る”と“サポートする”の狭間で葛藤が絶えることはない。それでも大人は｢何でもやってみたらいいんよ｣、｢みんなで話し合ったら｣と、子供たちの背中をそっと後押しすることで成長を促していく。想像以上に根気のいる米作りや初めての喫茶店運営、私立中学受験への挑戦、そしてそれぞれの思いが交差するスタッフ選挙(スタッフの雇用はハローワークや学校などを通じて応募してきた候補者が、現地での体験を経て自らのプレゼンテーションを実施。生徒による投票によって選任される)など、様々なことに悪戦苦闘しながら取り組んでいく様子がつぶさに収められている。