DOCUMENTARIES ABOUT COUNTRYSIDE FOREST

Text_SWAG H.

DOCUMENTARIES
ABOUT
COUNTRYSIDE
FOREST

山村の記録写真と語り部たちの証言によって,
環境との共生社会の示唆を得るドキュメンタリー。

ENTERTAINMENT Sep 13, 2024

Text_SWAG H.

高度経済成長以前の山里の暮らしを解き明かすことで、環境との共生社会を実現するためのヒントを探るドキュメンタリー映画｢山里は持続可能な世界だった｣が、9月19日(木)までヒューマントラストシネマ有楽町にて公開中。

本作は、昭和40年代以前の農山村の暮らしを記録した膨大な白黒写真を手掛かりに、当時を生きた人たちと当時の生業の継承者たちを取材したドキュメンタリー作品である。監督を務めたのは、｢食の安全を守る人びと｣(2021)や｢若者は山里をめざす｣(2023)など、主に農業や環境問題をテーマにした作品を発表してきた原村政樹。原村監督は、｢過疎化が進む山里は本当に貧しく、寂しい所なのだろうか？｣という問いかけを起点に、作品制作をスタート。埼玉県、群馬県、福島県の山間部に暮らす70代～90代の人たちに、当時を記録した写真を実際に見てもらいながら、話を聞いて回った。

写真には、およそ現代社会からは想像もつかない、まるで江戸時代かと錯覚しそうな簡素な暮らしぶりが記録されていた。電気も水道もガスもない自給自足に近い暮らしは、同時に厳しい労働の日々でもある。それでも、当時を振り返る村人たちの表情は明るく、原村監督にはどこか輝いて見えたという。自然と共生し、村人同士が助け合いながら暮らしていた事実は、タイパやコスパといった効率ばかりを重視し、｢無縁社会｣と言われる現代社会が忘れがちな大切な価値に気付かせてくれるのだ。

また映画では、鍛冶屋、炭焼き、養蚕、原木椎茸栽培、伝統的林業、生活雑貨制作といった、かつての生業を受け継いでいる人たちを取材し、仕事に込める深い想いにも迫る。彼らは一様に仕事への誇りを持ち、自然への感謝の心に溢れていた。さらに、戦後の林業政策や木材の輸入自由化にも触れ、国の政策が森林の荒廃と山里の衰退に繋がった歴史も伝えるなど、多角的な視点で問題点を浮き彫りにする。

過去を美化するのではなく、ありのままの暮らしを伝えることで、我々はそこから何を受け継ぎ、どう発展させていけばいいのかを鑑賞者に問いかける。文明は進化し、インフラも整備されて確かに生活は劇的に便利になった。それでも環境破壊は取り返せないレベルまで進んでしまい、ますます貧富の格差は広がるばかりだ。かつての山里の暮らしと現代社会はどこが違い、何を学ぶべきなのかを本作で見つけてみてはいかがだろう。

INFORMATION

山里は持続可能な世界だった

9月19日(木)までヒューマントラストシネマ有楽町にて公開中。他、川越スカラ座(10月5日～10月18日まで)など、順次公開中！

監督：原村政樹
プロデューサー：鈴木＜神出＞敏夫
音楽：鈴木光男
語り：的場浩司
取材地域：埼玉県(秩父市、小鹿野町、長瀞町、飯能市、東秩父村)/群馬県(安中市)/福島県(三島町)
制作、著作：映画｢山里は持続可能な世界だった｣製作委員会

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