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民主主義やジャーナリズムとは何かを問い直す,
ラッパーと芸人による異色の政治ドキュメンタリー。
ENTERTAINMENT Feb 3, 2023
ラッパーのダースレイダーと時事芸人のプチ鹿島が、選挙戦の突撃取材を通して、選挙とは何か、民主主義とは何か、ジャーナリズムとは何かを問う政治ドキュメンタリー「劇場版 センキョナンデス」が、2月18日(土)より渋谷シネクイント、ポレポレ東中野他にて全国公開される。
ヒップホップユニット、MICADELIC(マイカデリック)のメンバーとしてキャリアをスタートし、現在はファンクバンド、The Bassons(ベーソンズ)でアーティスト活動を続けるダースレイダーと、新聞14誌を毎日読み比べ、テレビ番組や執筆活動など、幅広く活躍している時事芸人のプチ鹿島。そんな2人が2020年からスタートさせたYouTubeの配信番組が「ヒルカラナンデス(仮)」だ。緊急事態宣言が発出直後から放送を開始したとあって、アベノマスクや10万円給付をめぐるゴタゴタなど、コロナ禍で図らずも露呈した政治家の不思議な振る舞いについて、笑いを交えながら本質的な議論を展開する時事プログラムは、これまでになかった大きな反響を呼ぶこととなった。
本作は、当番組のスピンオフとして立ち上げられたもので、2021年の衆院選、2022年の参院選の街頭演説に密着し、菅直人元総理をはじめ、平井卓也氏、泉健太現立憲民主党代表、小川淳也氏など、与野党問わず合計十数人の候補者に2人が突撃取材を敢行する様子を記録したものである。自らを野次馬と称し、ドキュメンタリーの作法や手法を無視し、自身が喋りまくり聞きたいことをその場でズケズケ聞いて、相手から思わぬ本音を引き出していくスタイルは、本作に推薦コメントを寄せた「ゆきゆきて、神軍」(1987)の原一男監督をして、マイケル・ムーアを凌ぐ面白さと言わしめた。
そして、“野次馬”2人の問題意識は、政治家だけでなく、本来それを注視する役目を担うべきジャーナリズムにも向けられる。とりわけ自他ともに認める“新聞読みのプロ”であるプチ鹿島には、どうしてもその姿勢を問い質したい新聞社があった。前述の平井卓也氏の一族がオーナーの香川でシェア6割を誇る四国新聞である。平井氏の実弟が社長を務める同新聞の、どこか身内贔屓とも言える偏った論調や報道姿勢の不可解さについては、これまでもプチ鹿島が「文春オンライン」誌上で度々指摘するなど、両者は浅からぬ因縁があった。本作では遂に本社へと乗り込み、ド正論という刃を突きつけるプチ鹿島VS四国新聞のバトルも見所のひとつである。
さらに、取材真っ只中で起こった安倍元首相の銃撃事件をきっかけに、ドキュメンタリーは想定外の方向に展開していく。街頭演説を取り止める候補者や敢えて行う者など、対応が分かれる中、かつて国会を舞台に舌戦を繰り広げた辻元清美氏は偶然、取材中に安倍氏の死を知ることになる。熱い議論を交わす中で、その言動を面白おかしく揶揄されることも多い辻元氏だが、その瞬間に見せた悲壮感漂う表情と涙を拭いながら絞り出した言葉にその誠実な人柄が伺えた。そして、選挙は祭り! だと意気揚々に取材現場へと乗り込んだダースレーダーとプチ鹿島にとっても、この想像をもし得なかった事件は、真相が分からぬままネット上に飛び交う無責任な言説も含めて、民主主義とは何かという根源的な問いへの答えを探すロードムービーの様相を呈していく。
なお、本作のプロデューサーを務めたのは、立憲民主党の小川淳也氏と自由民主党の平井卓也氏の選挙戦を追った大ヒットドキュメンタリー「香川一区」を手掛けた大島新氏。同作と併せて観ることで、そのいびつで重層的な構造を理解することができる。ラッパーと芸人という異色コンビによる新しい政治ドキュメンタリー「劇場版 センキョナンデス」をお見逃しなく。
2月18日(土)より渋谷シネクイント、ポレポレ東中野他全国順次ロードショー
監督:ダースレイダー、プチ鹿島
エグゼクティブプロデューサー:平野悠、加藤梅造
プロデューサー:大島新、前田亜紀
音楽:The Bassons(ベーソンズ)
監督補:宮原塁
撮影:LOFT PROJECT
編集:船木光
音響効果:中嶋尊史
宣伝: Playtime
配給協力:ポレポレ東中野
配給:ネツゲン
2023年|日本|ドキュメンタリー|109分/DCP
©「劇場版 センキョナンデス」製作委員会
senkyonandesu.com