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ブランドオーナーの凋落をブラックに描いた,
「グリード ファストファッション帝国の真実」。
ENTERTAINMENT Jun 1, 2021
ファッションビジネスの光と陰を描いたブラックエンターテインメント「グリード ファストファッション帝国の真実」が、6月18日(金)より公開する。
舞台は、ギリシャ、ミコノス島。かつてファストファッションブランドの経営で財を成したリチャード・マクリディは、この地で開催される自身の還暦パーティを盛大に祝うために、離婚した元妻や子供など家族一同で集まった。折しも、脱税疑惑や国外の縫製工場の劣悪な労働環境について追求され、マスコミから“グリーディ(強欲な)・マクリディ”と揶揄されたリチャードは、名誉挽回のためこのショーアップされたパーティでかつての威光を取り戻そうと目論む。しかし、湯水のように金を使い、傲慢に振る舞うリチャードと家族や部下の間には、徐々に不協和音が生じていく……。
傍若無人に振る舞うリチャード・マクリディのモデルとなったのは、人気ファストファッションブランド、TOPSHOPを擁しながら、2020年に経営破綻したアルカディアグループのオーナー、フィリップ・グリーン卿。本作は、ファストファッションの王として君臨した男の華麗なるセレブ生活の裏に隠された格差社会の闇を、ウイットに富んだジョークを散りばめがら、鋭い問題提起と共に描いている。監督を務めたのは、マンチェスタームーブメントの狂騒を描いたヒット作「24アワー パーティピープル」などを手掛けた奇才、マイケル・ウィンターボトム。主演は、ウィンターボトム作品の常連でもあるイギリスの人気コメディ俳優、スティーヴ・クーガンが務め、日焼けした肌と不自然に輝く白い歯を持つ不遜な成金の姿を見事に演じた。
本作は実在のモデルこそいるが、基本的にはフィクションである。しかしかつては、多くのファッションブランドが海外の労働力を安く買い叩いて莫大な利益を上げるなど、搾取の構図の上でビジネスが成り立っていたことは周知の事実である。また、劇中でも描かれるパワハラやセクハラの問題は、時代の流れと共に徐々に是正されつつあるが、未だ根強く残っている。こうした問題は、表向きには多様性の促進や持続可能な社会を謳うファッション業界にもまだまだ存在し、その理想と現実の乖離に鼻白むことも多い。それに、若者を中心に厳しい経済事情などからファストファッションしか選択肢がない場合もあるだろうし、商品が作られる過程や働く人のことまで思いを巡らすのは難しいかもしれない。ただ、労働者の権利を守ることや、環境に配慮した素材を使うこと、ジェンダーバランスを改善すること、あらゆる差別に対して毅然とした態度をとることなど、様々な面で明確な立場を表明する企業やブランドも増えている。この作品の本筋からは外れているかもしれないが、私たちに求められているのは、そういったブランドを消費者として応援することであるという、至極当たり前のことにも今一度気付かされた。
イギリスらしいウイットに富んだ描写を交えながら、1人の強欲なキャラクターを通して、資本主義や格差社会の現実に踏み込んだ「グリード ファストファッション帝国の真実」は、鑑賞者に様々な気付きを与えると共に示唆に富んだ作品となっている。
6月18日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督&脚本:マイケル・ウィンターボトム
出演:スティーヴ・クーガン、アイラ・フィッシャー、シャーリー・ヘンダーソン、エイサ・バターフィールド
2019|イギリス|英語|原題:GREED|カラー|シネスコ|5.1ch|104分|映倫区分:PG12
Ⓒ2019 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION
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