THE SAVIOR FOR SALE | SWAG HOMMES

THE SAVIOR
FOR SALE

510億で落札されたダ・ヴィンチ最後の傑作を巡る
欲望まみれのミステリーノンフィクション。

Text_SWAG H.

専門家によるお墨付きを得たこの歴史的な作品を巡り、投資目的の大財閥や莫大な手数料を騙し取ろうとする仲介人、さらに巧妙なプレゼンテーションで作品の価値を釣り上げるマーケティングマンと、それに利用されるハリウッドスター、レオナルド・ディカプリオ、さらに国際政治での暗躍が噂されるある国の王子など、それぞれの思惑を抱えたキナ臭い連中が世界中から集まってくる。他方で、この作品は、｢ダ・ヴィンチの弟子による作品だ｣と、断言する美術界の権威も現れるなど、事態はさらに混迷を極める。その結果、2017年に一般市場で流通している美術作品としては市場最高額となる510億円で落札されるのだが、購入者や大金の出所が明らかにされると、ルーブル美術館まで巻き込んだ新たな謎へと発展していくのである。

本作は、この一連の出来事をもとに制作されたドキュメンタリーであり、作品の真贋も含めて今なお謎が深まるばかりの｢サルバトール・ムンディ｣にまつわる秘密を鋭く紐解きながら、知られざるアート界のからくりや闇の金銭取引の実態までを生々しく描き出す。ダ・ヴィンチ作品とはディールの規模こそ違うが、こうしたアートバブルともいえる狂想曲は、今やストリートアートも例外ではない。バンクシーやKAWSといった有名どころはもちろん、昨年開催された｢SBI Art Auction Live Stream｣において、ペイント作品が4400万円で落札されたTIDEや人気のKYNEなど、日本人作家のアートピースもかなり高額で取り引きされている。アーティストの実力が評価され、作品の価値が認められるのは喜ばしいことだが、二次流通におけるアーティストへの還元と投資目的の資産家や富裕層が手にする利益の非対称性には、やはりもやもやしたものが残る。それが資本主義だと言われればそれまでだし、文化や芸術は誰のものかというのも口幅ったいが、このドキュメンタリーに映し出されるアートシーンに巣食う闇と、そこに群がる魑魅魍魎の姿から何か見えてくるものもあるはずだ。

INFORMATION

ダ・ヴィンチは誰に微笑む

11月26日(金)TOHOシネマズシャンテ他全国順次公開

監督：アントワーヌ・ヴィトキーヌ
撮影：グザビエ・リバーマン
編集：イバン・ドゥムランドル、タニア・ゴールデンバーグ
音楽：ジュリアン・ドゥギン
配給：ギャガ
2021年製作｜100分｜フランス
©️2021 Zadig Productions©️Zadig Productions – FTV

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