2020年に逝去した映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネの生涯に迫ったドキュメンタリー映画｢モリコーネ 映画が恋した音楽家｣が、2023年1月13日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ他にて全国公開される。

ローマ生まれのエンニオ・モリコーネは、1961年に単独名義による映画音楽作曲家デビューを果たすと、2020年7月に91歳で惜しまれつつこの世を去るまで、500作品以上という驚異的な数の映画とテレビ作品の音楽を手掛けた。一躍その名を轟かせたセルジオ・レオーネ監督とのコンビ第１作｢荒野の用心棒｣(64)をはじめ、｢ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ｣(84)、｢ミッション｣(86)、｢アンタッチャブル｣(87)、｢ニュー・シネマ・パラダイス｣(88)、｢海の上のピアニスト｣(98)など、数々の名作映画に携わり、アカデミー賞には計6度ノミネート。2016年に｢ヘイトフル・エイト｣で待望のアカデミー賞作曲賞を獲得し、2006年にはその全功績を称えて名誉賞を受賞するなど、映画音楽のマエストロとして世界的な名声を手にしてきた。

生前の姿を捉える最後の作品となってしまった本作では、モリコーネ自身が｢ジュゼッペ以外はダメだ｣と直々に監督に指名した弟子であり、親友でもある｢ニュー・シネマ・パラダイス｣のジュゼッペ・トルナトーレ監督が、5年以上にもわたる密着取材を敢行。モリコーネ自らが自身の半生を回想し、かつては映画音楽の芸術的地位が低かったため幾度もこの仕事をやめようとしたという衝撃の事実や、奇才スタンリー・キューブリック監督が｢時計じかけのオレンジ｣でオファーしたものの、嫉妬にかられた友人のセルジオ・レオーネ監督が多忙を理由に勝手に断ってしまったという仰天のエピソードなどが明かされる。

モリコーネが生涯の師として崇める作曲家のゴッフレード・ペトラッシが、アカデミックな音楽家にとって、商業音楽を書くことは道義的に非難されると考えていたこともあり、成功の裏では常にクラシック音楽の道へ進まなかった葛藤と向き合いながら、いかにして音楽家としての誇りを手にするに至ったかが、数多の懐かしい傑作の名場面と、ワールドコンサートツアーの心揺さぶる演奏と共に紐解かれていく。

また、映画監督のクエンティン・タランティーノ、ベルナルド・ベルトルッチ、クリント・イーストウッド、テレンス・マリックをはじめ、｢007/ノー・タイム・トゥ・ダイ｣(21)や｢トップガン マーヴェリック｣(22)などを手掛けるハンス・ジマー、｢スター・ウォーズ｣(77)、｢E.T.｣(82)、｢シンドラーのリスト｣(93)のジョン・ウィリアムズといった映画音楽家、さらにブルース・スプリングスティーンやクインシー・ジョーンズなどのミュージシャンに至るまで、70人以上の豪華な著名人のインタビューも収録。知られざるモリコーネの仕事術の秘密が語られると共に、生まれ持った才能と閃き、貧しかったために働きながら通った音楽院での地道な努力、新しいムーブメントを取り入れる柔軟なセンス、信念に反することは断固拒否するプライドについての様々なエピソードを通してモリコーネの人生そのものが偉業であったことが証明されていく。