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ABOUT OCT, 2024
“SWAG HOMMES NIGHT CLUB”に出演,
気鋭のUSラッパー,Buddyの独占インタビュー。
ENTERTAINMENT Dec 16, 2022
本Webに掲載中のナイトクラブパーティ「SWAG HOMMES NIGHT CLUB supported by Y-3」(2022年11月11日(金)、渋谷の新ベニュー「BAIA」にて開催)のパーティレポートに続いて、イベントのヘッドライナーとして来日したカリフォルニア州コンプトン出身の気鋭ラッパー、Buddy(バディ)の独占インタビューを公開。これまでに国内外の多くのヒップホップアーティストを取材してきた音楽ジャーナリストの渡辺志保をインタビュアーに迎え、ファッションを軸に音楽やアートといった様々なフィールドで活躍する気鋭フォトグラファーの赤木雄一が捉えたヴァイブス溢れるライブ写真と共にお届けする。
SWAG H.(以下 S) こんにちは。東京での時間を楽しんでいますか? 東京に来るのは初めてではないですよね?
BUDDY(以下 B) 昨日、着いたばかりで、早速2度目の東京を楽しんでるよ。渋谷PARCOの「ポケモンセンター」や「Nintendo TOKYO」にも行って。同じタイミングで東京に来ていたThundercat(サンダーキャット)と合流して、ちょうどさっきまで一緒にいたところ。今日は朝からThundercatが中野ブロードウェイに連れて行ってくれて、クールなものをたくさん買った! 面白い時計からアニメグッズまで山ほどあって、すごい場所だったよ。俺たちが行った時間が早過ぎて、まだ閉まっていたお店もたくさんあって残念だったけど。このインタビューとSWAG HOMMESのファッションシューティング(次号ISSUE 16に掲載予定 )のために帰ってきたんだ。
S 今回の撮影はいかがでしたか?
B 最高のシューティングだった。プリーツショーツを履いたのは人生初だったし、スタイリングも気に入ってるよ。スタイリストの服部(昌孝)さんが素晴らしくて、なんと俺にソックスを履かせてくれたり、服も着せてくれて……。「そこまでやってくれるんだ!」って感動した。そんなこと今までされたことがなかったから(笑)。
S あなたの楽曲「Ain’t Fair」では、“I’m packin’ these shows in Japanese clothes(ライブは客でいっぱい、俺は日本の服を着てる)”というリリックも登場します。実際に好きな日本のファッションブランドはありますか?
B 「NEPENTHES(ネペンテス)」が好きで、「NEEDLES(ニードルズ)」や「SOUTH2 WEST8(サウスツーウエストエイト)」も好き。「KAPITAL(キャピタル)」も超かっこいいと思う。それに、VERDYも好きだし、「HUMAN MADE(ヒューマンメイド)……NIGO®がやってることなら何でも好き。今も「CURRY UP」(NIGO®がプロデュースするカレー屋)のカレーを食べてるところだしね。ヤバい! 「COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)」を忘れるところだった。カモフラージュ柄が最高だと思う。
S 2022年にリリースされたアルバム「Superghetto」について聞かせてもらいたいのですが、強烈なタイトルですね。どういった意図で名付けたのでしょうか?
B アルバムの制作を進めていくうちに、アルバムのタイトルが浮かんできたんだけど、“Superghetto(スーパーゲットー)”というのは、俺のエッセンスなんだ。実際にゲットーで育ったし。でも、ゲットーにいることやゲットーで育ったこと、というのはマジで普遍的なことだと思う。世界中のどこに行ったって、街角にはゲットーがある。そして、“ゲットー“という言葉に対して人々が感じ取るナラティヴも変えていきたいと思ったんだ。アルバムの幕開けは「Hoochie Mama」という曲で、最高にゲットーでラチェットで、みんなの注目を惹くような曲。でも、アルバムを聴き進めていくと、それだけじゃないって分かっていくと思う。「ゲットーからやってきた」という事実の、より明るい面にフォーカスしたいという思いが伝わってほしい。
S 普通の“ゲットー”ではなく“スーパーゲットー”と題した理由は?
B うーん、言うなれば、普通のゲットーの最上位版が“スーパーゲットー”なんだよ。まるで超能力みたいなもの。決して悪意があったり、誰かを傷つけるような言葉ではない。分かるかな?
S 例えば、どんな時に「ワォ! これはスーパーゲットだな」と感じますか?
B おそらく、デカいお尻の女性を見た時とか、大金を見た時かな(笑)。でも、咲いている花や素晴らしい家具を見たときにも同じように感じるよ。それに、ハイブランドの洋服、イケてる車や家。または、家族同士の口喧嘩やハードな会話、行き違ってしまうコミュニケーションとか、それに関連する出来事もそうかな。
S ご自身の地元、コンプトンについて聞かせてください。我々にとっては、とても危険な街だというイメージが根付いてしまっているようにも感じるのですが、実際はどんなエリアなのでしょうか。
B 危険な場所だらけだけど、温かい雰囲気のコミュニティでもある。みんなのおばあちゃんだって住んでいる地域なんだから。でも、そのおばあちゃんのためにハードな道を選ぶ人たちもいる。いつだって敵対しているギャング集団がいるし、個人的な問題を抱えているやつもいる。とはいえ、大部分はみんなそれぞれの人生を頑張って生き抜こうとしている人たちばかりだし、このロサンゼルスという街でなんとかやっていこうと日々暮らしている人たちだよ。各自、周りに警戒しながらね。
S 今もコンプトンにお住まいなのですか?
B ノーノーノー。今は、他のエリアに住んでるよ。イーストLAのあたり。中心部に比べると少し静かで、過ごしやすいんだ。ここに至るまで何度か引っ越しをしていて、まず、コンプトンからサンタモニカに移ったんだ。ビーチが近いのは良かったんだけど、リラックスモードになり過ぎちゃって、まるで定年退職後の生活って感じだった。「人生に必要な金はもう稼ぎきったぜ~」みたいな(笑)。「さぁ、ビーチに行って本でも読むか!」って、自転車に乗ったりパイとか焼いちゃったりして。これじゃ、ダラけちゃうと思って、次はウエスト ハリウッドに引っ越した。スタジオもそこら中にあるし、色んなアーティストも近所に住んでる。それから、メルローズのあたりに住んでいたんだけど、フェアファックスも近いし、とにかく色んなものがすぐそこにあるんだよね。ごちゃごちゃしていて、まるでガンボスープの鍋の中にいるみたいだなと感じてたんだ。だから、もうちょっと離れつつも、仕事にも差し支えない場所に引っ越さなきゃと思って、今の家に落ち着いたんだ。ミッション完了って感じで、ようやく落ち着いた場所を見つけることができたよ。
S 「Superghetto」はたくさんのゲストが参加しているプロジェクトですが、どのように制作をスタートさせたのですか? 全体の計画表やリストを作るなど、しっかり準備した上で挑んだのでしょうか。
B いや、最初は本当にただ音楽を作っていただけ。たくさんのスタジオを回って作ったんだけど、まずロサンゼルスのウェストレイクのスタジオで、その後、「レコード・プラント・スタジオ」に行ったんだっけな。スタジオにはたくさんの仲間(Homies)がいて、ちょっとした機材があって、その場でセッションしていった。その後、ハワイにも行ってレコーディングをしたんだ。だから、移動しては曲を作って、さらに移動して……という出来事の連続だった。そのうち、「なんとなく形になり始めたぞ」というタイミングで、山ほどある楽曲をホワイトボードに書き出していったんだ。トラックリスト的なものを作って、「この曲は入れよう、この曲はなし、いや、やっぱり戻そう」って感じで。最高のアルバムを完成させるために、すべてを組み合わせようとしたんだよ。最初は10曲だったけど、そこに数曲を加えて、デラックス版としてリリースした。
S 前作から数えて4年ぶりの新作となったわけですが、制作時期はコロナによるパンデミック時期と重なりましたね?
B そうだね。コロナも影響していると思う。パンデミックに襲われた渦中は、大きなスタジオには入れなかった。でも、逆にめちゃくちゃラップしたい気持ちになったんだ。だから、気が付いたらマイクの前に立って、ビートを流しながらとにかくハードにラップしまくってた。いつか曲にしてやろうと思って、話したいことや感情、自分の気持ちなんかをとにかくマイクにぶつけて。そのおかげもあってか、自分が何を言いたいのかを気づくことができたんだ。その後は、それを制作に落とし込んでいった。
S アルバムには、D’Mile(D’マイル)やRobert Glasper(ロバート・グラスパー)といった人気プロデューサーも多く参加していますね。
B そうそう。色んなプロデューサーがスタジオに来てくれて、それぞれ違うビートや生楽器を持ち寄ってレコーディングしていった。時には盛大なジャムセッションになることもあったな。そんな感じだから、すごくオーガニックに出来上がった曲ばかりなんだ。それぞれの波長が合うまで、みんなが適当に演奏を続けながら、曲の形になっていく。誰かがドラムを弾いて、誰かがギター、その横では他の誰かがピアノを演奏しつつ……みたいな。それで、「これはいい感じ!」となったら、そのままレコーディングしてみよう、とプロセスを経ていった。俺がマイクを握ってフリースタイルをして、あくまでオーガニックな形でヴァイブスを作っていく。その次に、歌詞にしたいトピックをピンポイントに絞っていく。異なるリズムやフロウを試していって、クラブっぽいノリの曲にしたいのか、もっとポップでラジオ向きの曲にしたいのかってことを話し合いつつ、また何時間もジャムセッションを続けていく。そして、それぞれの最高な部分を繋げて、ひとつの楽曲に仕上げていく、という感じ。
S 「Happy Hour」は、Terrace Martin(テラス・マーティン)とRobert Glasperといった錚々たるミュージシャンたちが参加していて、かつ、ゲストにはT-Pain(T・ペイン)もいて……とてつもない楽曲ですよね。
B みんな、俺のスタジオに寄ってくれて、一緒に時間を過ごして、何となく参加してほしい曲を聴かせていくうちに、仕上がっていったんだよね。Robert Glasperに関しては、最初に俺が彼のスタジオに行ったのがきっかけ。元々、彼のアルバム「Fuck Yo Feelings」に俺が参加することになっていて、実際にそこで自分のラップをレコーディングしたんだ。そのときに、「実は俺も、ちょっと弾いてほしい曲があるんだけど」といって自分の曲を聴かせたら、その場で最初から最後まで鍵盤の音を足してくれたんだ。本当にクールだったし、曲にもぴったりだった。その後で、ベストな状態になるようにアレンジを加えていったんだ。Terrace Martinとの場合は、物々交換みたいな感じ。「今回、これに協力してほしいんだけど」と頼んで、参加してもらった。友達だからこその関係だし、愛情があるからこそ参加してくれる。T-Painは、彼に電話して、こっちから曲を送ったらヴァースを入れて返してくれた。そして、見事にT-Pain色に染めてくれたって感じ! タイムレスだし、この俺が、「T-Painによる史上最高の客演ヴァースを手に入れたぞ」って感じだよね。
S アトランタの大御所プロデューサーチームである、Organized Noize(オーガナイズド・ノイズ)が参加していることにも驚きました。
B 友達のKent Jones(ケント・ジョーンズ)が繋いでくれたんだ。彼がアトランタに行った時に、Dungeon Family(ダンジョン・ファミリー)やOrganized Noizeと仲良くなったみたいで、Kent Jonesのところにたくさんビートが送られてきた。で、ビートが入ったフォルダを俺に聴かせてくれて、一緒にスタジオに入ったんだ。ざーっとビートをチェックして、「これだ!」ってKent Jonesに伝えて、ぜひ自分のアルバムに収録したいとお願いしたら、「問題ない」ってことで「Ain’t Fair」が完成したんだ。でも実は、Organized Noizeがビートのフォルダをなくしちゃって、もう1回ビートを組み直してくれたんだよね。逆に、少しだけ原曲よりもよくなったと思うよ。
S 「Black 2」に関してですが、元々「Black」は2018年にA$AP Ferg(エイサップ・ファーグ)を招いてリリースされたシングルです。今回、その曲の続編を作ろうと思ったきっかけは?
B 特に明確なきっかけはないよ。俺は毎日、Black(黒人)として過ごしているわけだから、黒人でいる気持ちを曲にしただけ。スタジオに行って、「Black 2」のビートを聴いていたら「コレだ!」と思って、すごくいい感じにラップできたんだ。「Black」も人気の曲だし、これを「Black 2」にしようと思って。でも、「2」の方がよりキャッチーだよね。フックでは30回も”Black”って言ってるし。続編だから、もっとファニーな感じを出したかったんだ。でも、ちゃんと的を得た真実についてラップもしている。自分のブラックネスを相手の面前に突きつけるような感じではなくて、ただ、自分が黒人である、ということを伝えたかった。
S MVも、より皮肉が効いている感じですよね。リリックでも、“みんな、ビートの上でラップしたがる”、”アフリカ系でもないのでドレッドヘア(dreads)にしたがる”とラップしていて。その真意を聞かせていただけますか?
B ドレッドについては、目に付きやすいから指摘しただけ。実は、日本のファンからDMをもらったんだ。「あなたのファンです。ドレッドヘアにしたいと考えているのですが、どう思いますか? あなたの気分を害するつもりはありません」って。俺は「やっちゃいなよ」って返した。「これはやっちゃダメ、あれもやっちゃダメ」と言うつもりはない。そうしたところで、結局は止められないんだから。
S 日本にも、ラップやヒップホップカルチャーを愛する若者がたくさんいます。それぞれ、リスペクトをもって接している。でも時に、「これは文化の盗用なのでは?」と思うこともたくさんあって。
B その境界線は際どいところだよね。結局のところ、「その人のハートがどこにあるか?」ってことが大切だと思う。中には、単純に見たものをかっこいいと思って、それをそのまま真似してしまう人もいる。だけど、その一方で、「いいな」と思っても、その事柄について調べて、より大きな視点で“盗用”ということについて考える人もいると思うんだ。もしかしたら、俺も、ドレッドヘアの子に声を掛けて、「なぜドレッドにしたの?」と聞くかもしれない。そこで、きちんと答えをもらったら、「OK、クール」って納得すると思うよ。「今すぐ、そのドレッドを切れ!」とは言わない。自分の人生なんだから、自分らしくいてほしい。
S 現在のアメリカでは、たくさんのラッパーが銃によって命を奪われてしまうニュースが続いているように思います。
B 銃、銃弾、そして敵を抱えている人がいる、ということだよね。敵に対しては、死んでほしいと思っている。でも、それに伴ってたくさんの事故やクソみたいな出来事までもが起こっている。Takeoff(テイクオフ)が殺された時も、クソみたいな状況だった。あんな事件は起きてはならないよ。本当に本当に、おかしいと思う。ファックな雰囲気やエネルギーに巻き込まれてしまうと、誰も銃弾を避けることは出来ない、ということなのかな。たとえ、すぐそばにセキュリティがいたとしても。本当に些細なことが引き金になって、発砲に至ってしまうんだ。バカみたいなエゴの問題だと思う。人々も不安を抱えているだろうし。俺は銃を持ち歩くようなことはないし、所有すらしてないよ。
S ところで、最近の注目すべきLAの若手ラッパーがいたら聞かせてください。
B Huey Briss(ヒューイ・ブリス)は本当にヤバいよ! 「Wishing Out Loud」ってアルバムを出していて、マジでいいラップをするんだ。リアルなラッパーだから、絶対に聴いてほしい。
S 最後の質問となりますが、今後のご予定は?
B そうだね、すでに早く家に帰ってまた楽曲制作をしたいと思っているよ。今年の4ヶ月くらいは世界中を回ってライブをしていたから、ゆっくりスタジオに籠って新曲を作る時間もなくて。だから、またクリエイティブなモードになって制作するのがとっても楽しみなんだ。
1993年生まれ、カリフォルニア州コンプトン出身の気鋭ラッパー。説教者で聖歌隊の指揮者でもある父親からゴスペルとソウルを紹介され、7歳でパフォーマンスのキャリアをスタート。2009年、弱冠15歳でPHARRELL(ファレル)が設立したレーベル「i am OTHER」と契約。2012年に発表したKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)を客演に迎えたThe Neptunes(ザ・ネプチューンズ)プロデュースによる楽曲「Staircases」を皮切りに、Freddie Gibbs(フレディ・ギブス)、Nipsey Hussle(ニプシー・ハッスル)、Chance The Rapper(チャンス・ザ・ラッパー)、Wiz Khalifa(ウィズ・カリファ)、A$AP Rocky(エイサップ・ロッキー)、J.Cole(J.コール)、Miley Cyrus(マイリー・サイラス)など、錚々たるアーティストと共演。2018年、「Cool Lil Company/RCA Records」に移籍後、Snoop Dogg(スヌープ・ドッグ)、A$AP Ferg(エイサップ・ファーグ)、Ty Dolla $ign(タイ・ダラー・サイン)らを客演に迎えたデビューアルバム「Harlan&Alondra」、2020年にはKent Jamz(ケント・ジャムズ)とのコラボレーションアルバム「Janktape Vol.1」、そして、2022年3月、T-Pain(T-ペイン)、Blxst(ブラスト)、Tiashe(ティナーシェ)といった幅広いタイプのアーティストをフィーチャーしたアルバム「Superghetto」をリリース。音楽/映像作品/ヒップホップライター、市川タツキが選ぶヒップホップ年間ベスト2022年ランキングの8位に「Superghetto」が選出されるなど、GファンクやR&Bなどをブレンドさせたソウルフルでレイドバックなムードのサウンドに、心地良いフロウのラップスタイルで絶大なる支持を集めている。
SWAG HOMMES NIGHT CLUB
supported by Y-3
開催日:11月11日(金)
時間:OPEN 22:00/CLOSE 5:00
会場:BAIA
東京都渋谷区宇田川町16-17
料金:DOOR MEN¥4,000(2D)/LADIES¥2,000(2D)
[MAIN FLOOR]
SPECIAL LIVE:BUDDY
DJ:Minnesotah(KANDYTOWN), DJ KANJI, FOOLISH MAN, nasthug
[1 FLOOR]
DJ:Little Dead Girl, Katimi Ai, JUN INAGAWA, SAMO, An toi, SOTA(WASP), TOMOYA