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ルーク・メイヤー 本誌独占インタビュー!
コロナ禍の創作,そして社会と対峙する必要性。
FASHION May 25, 2021
ルーク・メイヤーは、自身のブランド、OAMCのクリエイティブディレクターであり、パートナーであるルーシー・メイヤーと共にイタリアのトップブランドを手掛ける今や最も影響力のあるデザイナーの1人。しかし、誰もが知る存在となった今でも人気デザイナー然たる派手な振る舞いはおろか、メディアへの露出も多くないため、その素顔はあまり知られていない。今回、アトランタのラッパー、KeithCharles(キースチャールズ)を起用したOAMCの2021春夏キャンペーンのタイミングで、日本の媒体では唯一SWAG H.だけのエクスクルーシブなインタヴューが実現。ミラノに住む彼に、最新コレクションからコロナ禍における創作活動、現在のお気にりのアーティストなどをメールで聞いた。
SWAG H.(以下 S) 今回のコレクション制作にあたり、新型コロナウィルスの感染拡大を受けて当初のコンセプトや方向性を見直したとのことですが、その辺りの気持ちの変化や、それが制作にどのように影響を及ぼしたかについて教えて下さい。
LUKE MEIER(以下 L) パンデミックはとても大変でした。2020年の10月、私と妻は1ヶ月もの間、体調を崩してしまいましたが、今では完全に回復しました。 しかし、多くの人はそれほど幸運ではなかったと思います。私は去年の5月から定期的にスタジオで作業していますが、もちろん、それを意識するしないに関わらずこの状況は作品に反映されます。ただ、私はもっと正確に、より集中して、ポジティブで人々に良い影響を与えるような作品を作る必要があると感じています。
S ルックブックのモデルにラッパーのキースチャールズを起用していますが、その経緯を含めて起用の理由を教えて下さい。
L 私は以前からキースの音楽を好んで聴いていました。彼は謙虚で、クリエイティブで、何より興味深い人物だと思います。幸運なことに私たちのキャンペーンに彼が協力してくれることになり、また出来上がったイメージとフィルムには私自身とても満足しています。
S 今回のビジュアルを手掛けたフォトグラファーのBen Grieme(ベン・グリーメ)と、フィルムを撮影したArtem Aisagaliev(アルトョーム・アイサガリエフ)について紹介して下さい。また、OAMCのクリエイティブを共に作り上げる外部のスタッフに対してあなたが求めるものはどんなことですか?
L 私はこの2人の仕事を尊敬しています。 今回のアイデアに関しては、孤立感や孤独感、そして希望や未来へのポジティブな見通しといった、今まさに私が感じていることを表現することでした。フィルムにはその気持ちがよく表れていると思いますし、キース(チャールズ)の雄弁な言葉と共に、私たちが今置かれている状況を見事に捉えていると思います。
S 今回のコレクションのカラーパレットは、コンセプチュアルアーティストのJohn Baldessari(ジョン・バルデッサリ)の作品からインスパイアされたとのことですが、 その魅力について教えて下さい。
L 私はバルデッサリの作品を長年研究してきましたが、今回のコレクションを制作するにあたり、バルデッサリの作品が今の時代に特に重要だと感じました。 彼のカラフルなインターベンションアートは、私たちが日々の苦しい状況の中でまさにこの活気を必要としていると感じたからです。 もちろんこれは最初のステップであり、バルデッサリの作品はそのコンセプチュアルな性質からも非常に興味深いと考えています。イメージや参考資料がインタラクティブに作用するというアイデアは、コロナのパンデミックが始まって以来、私たちが経験してきたお互いのつながりを強固にするものではないでしょうか。
S あなたはアートに造詣が深いことで知られていますが、現在注目している作家や作品はありますか? また、前回(2019年)の本誌のインタビューでは、 コム・デ・ギャルソンの川久保玲へのリスペクトを語っていらっしゃいましたが、他に日本のデザイナーやアーティストで気になる人がいれば教えて下さい。
L 今、私が鑑賞しているアーティストの作品やインスピレーションを受けた作品は、間違いなく今後のコレクションに反映されることでしょう。ぜひ期待していてください。 音楽と同じように、私は常にアートやクリエイションに興味を持っていて、いつだって新しいものを見ていたいと考えています。写真家の森山大道さんはここ数年、私に大きなインスピレーションを与えてくれました。一緒に仕事(注1)をすることができてとても光栄です。
注1:OAMC2020秋冬コレクションの中で、森山大道の作品をアートワークに落とし込んだプロダクトを展開。
S 最近はどういった音楽やアーティストを聴いていますか?
L Kelsey Lu(ケルシー・ルー)、Anika(アニカ)、Mk.gee(MK.ジー)、KeithCharles(キースチャールズ)、Madlib(マッドリブ)、MF Doom(MF ドゥーム)、Juggaknots(ジャガノッツ)、Company Flow(カンパニーフロウ)、The Arsonists(アーソニスツ)、and Nils Frahm(ニルス・フラーム)。
S あなたはジル サンダーでは奥様と一緒に仕事をしていますが、 今回のコロナ禍で家族との関係性やご自身の家族に対する考え方に何か変化はありましたか?
L 私は幸運にも妻と一緒に仕事をしており、このような厳しい状況の中でもお互いに顔を合わせることができることにとても感謝しています。 しかし、今は家族に会うことがとても難しく、姉とその家族が住んでいるイギリスや父が住んでいるカナダにも、もう1年以上行けていません。それに、世界中に住んでいる多くの親友たちも同じ状況で、 心から大切に思っている人たちと長い間会えていません。これはとても寂しい気持ちになりますが、近いうちにたくさんの素晴らしい再会ができることを心から楽しみにしています。
S 本コレクションのリリースの中で、不公平な社会のあり方を変える必要性や、変革に参加する必要性を説いていらっしゃいますが、 具体的にどんなところに不公平性を感じますか? また社会や政治など、あなたが怒りを感じるのはどんなことですか?
L 社会には変革を必要とする様々な側面があります。人種差別、性差別、そしてありとあらゆる種類の偏見が、私たち人間の本来持っている可能性を発揮するのを妨げています。 私たちは、自分たちの社会をじっくりと見つめ直し、必要な変化を起こす必要があります。 私は自分のできる役割を果たそうとしていますが、まだまだもっとできることがあるはずです。それに、私たちすべての人が社会に対してもっと何かできることがあると思います。
S これまで30回以上来日されていますが、コロナが明けて今度日本に来る事があれば何をしたいですか?
L まずは日本の友人に会うこと、そして日本を楽しみたいです。 慣れ親しんだ場所を見たり、新しい場所を発見したり……日本に戻って来れたことに感謝して、存分に満喫したいと思います。
TEL 03-6427-5901
www.oamc.com