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ディーゼルのデビューコレクションを終えた,
グレン・マーティンスに緊急インタビュー!
FASHION Jul 16, 2021
去る6月21日、ディーゼルは、2022年春夏コレクションをショートフィルム形式で発表した。これは、昨年10月に同ブランドのクリエイティブ ディレクターに就任したグレン・マーティンスにとってデビューコレクションとあって大きな注目を集めたが、本人もインタビュー中に語っているように、プレスやジャーナリストの間でもポジティブな評価を獲得する結果となった。若くしてY/プロジェクトで成功を収めた彼が、ディーゼルという世界的なブランドでどのような手腕を発揮するのか。今回、SWAG H.では、コレクションの公開を終えて間もないマーティンスにメールでのインタビューを敢行。コレクションの内容や、ディーゼルが推し進めるサステナブルな取り組み、自身の仕事観などについて話を聞いた。すべての質問に対し、びっしりと埋め尽くされた丁寧な回答からは、その明るい前途を予感せずにはいられない、クリエイションに対する情熱と誠実な人柄を伺い知ることとなった。
SWAG H.(以下 S) 今回のコレクションをショートフィルム形式で発表した理由や、その経緯を教えて下さい。また、新型コロナウィルスの影響は何かありましたか?
GLENN MARTENS(以下 G) このショートムービーを通して、私は自分自身と私のビジョンを自由に表現することができましたが、これほどまでに素晴らしくポジティブな反応を得られるとは夢にも思いませんでした。(新型コロナウィルスに関しては)状況がよくなってきているとはいえ、まだ道半ばですし、もちろん、通常のファッションウィークに戻れるのを楽しみにしています。これまではリモートによるムービー撮影など様々な経験をしましたが、今回は推奨されるコロナ対策を常に尊重しながら、通常の撮影と同様に行うことができました。
S コレクションのコンセプトやテーマ、イメージしたものがあれば具体的に教えて下さい?
G ディーゼルは人生を楽しむこと、際限の無い楽しさ、革新的、成功、そしてアクティブウェアをテーマにしています。 コレクションの中には、ブランドの基本的な価値観や、今日においても非常に適切で現代的な素晴らしい作品を含むディーゼルのアーカイブなどから着想を得ています。
S 映像は映画監督/アーティストのフランク・ルボンとのコラボレーションとのことですが、具体的なコンセプトや、夢と現実が交差するようなストーリーについて、もう少し詳しく教えていただけますか?
G ディーゼルでは、アートとの融合をとても楽しんでいます。このプロセスはまだ始まったばかりで、新しい現実に足を踏み入れようとしている逆さまの世界を映像に反映しました。この物語は、現実と夢の境界線を曖昧にし、4つの異なるフェーズで主人公の変遷と進化を追っています。まず、深夜のシーンを思わせる自宅の設定から始まり、そこから都会の道路のショット、そしてエレベーターでの移動。最後は、深紅のフィルターをかけた、トリッピーで異質な部屋で締めくくりました。
S 主人公の衣装でもあるファーストルックは、Y/プロジェクトでもよく見られたカッティングに特徴のあるカットソーとシンプルな5ポケットのデニムでした。これは、ご自身とディーゼルのシグネチャーを端的に象徴するものだと仮定すると、何かそこに特別なメッセージが込められているのでしょうか?
G ディーゼルは汎用的なブランドで、カジュアルウェアがその中心です。しかし、ルック1に見られるように、非常にベーシックでシンプルなアイテムにノウハウや研究、実験を注入することで、コンセプチュアルにできないわけではありません。今回のコレクションで最も象徴的なのは、Tシャツ、トップス、ドレスをまとめる織り込みのベルトです。これらのベルトは、それぞれのアイテムを独創的な新しいドレープとフォルムで固定する、一種のバックボーンのような役割を果たしています。(質問にある)ビデオの主人公(Ella Snyder、ルック1)が着用しているデニムとブーツを組み合わせたパンタブーツに関しては、普遍的で非常に汎用性の高いアイテムだと考えてます。
S たっぷりとした分量感と構築的なシルエットが多いメンズに対して、ウィメンズはベアトップや超ミニ丈のスカートやパンツ、身体に沿ったボディースーツなどヘルシーな美しさを強調したルックが印象的でした。これまで常にジェンダーにとらわれないスタイルを提案してきたあなたにとってはやや意外に感じましたが、何か特別な意図や狙いがあったのでしょうか?
G ディーゼルは、多くの人に語りかけることができるグローバルなブランドであり、異なる背景や独立したストーリーを持つ様々な人をターゲットにしています。つまり、出自、宗教、性別、年齢に関係なく、誰もがディーゼルに繋がりを持つことができるということです。今回のコレクションでは、それを反映させようとしました。私は、メンズ、ウィメンズという概念を特に意識はしておらず、性別やカテゴリーを超えたコレクションにしようとしています。もちろん、ウィメンズウェアとメンズウェアではアプローチの仕方が異なりますが、どちらもエキサイティングなものです。ウィメンズウェアについていえば、非常に爆発的かつ派手でアーティスティックなものになりますが、私にとってのメンズウェアは、よりエモーショナルなものです。
S ブランドが所有するデッドストックを再利用したアイテムも多数登場します。デザイナーとしてサステナビリティについてどのような考えをお持ちですか? また、ディーゼルのような大きなブランドだと、サステナブルな取り組みの効果が大きい反面、余剰在庫の多さなど色々と難しい側面もあると思いますが、その辺りについて何か考えることはありますか?
G ディーゼルでの私の最初の大きな仕事は、サプライチェーン全体と服作りのプロセス全体に疑問を投げかけることでした。わずか6カ月の間に、会社の生産プロセス全体を見直すことを経験しました。現在、私たちは透明性の高いポリシーを持って仕事をしています。例えばこの先、ウェアにあるQRコードをスキャンすると、ウェブサイトでそのウェアがどのように作られたかを知ることができるようになります。私がジョインする前のディーゼルでも、すでにサステナビリティが組織に組み込まれていたので、私は機械に燃料を入れるだけでよかったのです。私はデザイナーであり、新しいことが大好きで、自分自身や私の服を愛してくれる人たちを驚かせることができます。しかし、私が最も重視するのは、社会と環境のサステナビリティです。
S サステナビリティの理念を反映したジェンダーレスなプロジェクト「DIESEL LIBRARY(ディーゼル ライブラリー)」について、詳しく教えて下さい。
G ブランドにとって、デニムは昔も今も、そしてこれからも、ディーゼルのコアエンジンです。昨年10月に私が着任してから、サプライチェーンの再調整に取り組んできました。今年の11月から店頭に並ぶ「ディーゼル ライブラリー」は、ブランドの基本であるデニムの必須アイテム(デニムパンツ、スカート、ドレス)で構成されており、完全にサステイナビリティであることを想定しています。ディーゼルでは、透明性がサステナビリティの一部であることから、デニムを可能な限りクリーンなものにしたいと考えています。これは長い道のりですが、私たちはそれに全力で取り組んでいます。
S 自身のクリエイションにおいて“二面性”が最も大切であると常々おっしゃっていますが、今回のコレクションではどのような部分にそれが表現されていますか? また、コレクション前の取材コメントで実験的な素材を使用したとおっしゃっていたのですが、コレクションの終盤に登場するルック(77)のユニークなテクスチャーは、何か特殊な素材によるものでしょうか?
G 私は非常に実験的であることで知られていますが、ディーゼルでの実験的な試みは、衣服やその表面だけでなく、ウォッシュや加工、ミックスマテリアル、混合素材、色、グラフィックにも及びます。より実験的な作品としては、プリントやスモック加工を施したオーガンジー素材のものがあり、すべてにひび割れたペイントのモチーフを施しているのですが、ルック77もそれにあたります。
S 以前、どこかのインタビューで、チームで働くことの重要性を含めて人との関わりが服作りのモチベーションと語っていらっしゃいましたが、このコロナ禍でそれが難しくなって何か心境の変化や苦労した点などはありますか?
G 感染が拡大した当初は確かに簡単ではありませんでしたが、コレクションの制作を開始したときには、オフィスの同僚たちが尊重し合い、常に安全対策をとりながら正常な状況で仕事に望むことができました。私は、創造的な自由があること、そしてチームが一丸となって仕事に取り組めることにとても満足しています。また、仕事を楽しむことは私にとって最も重要なことのひとつです。
S クリエイティブ ディレクターに就任した際のコメントで「未来の展望を表現しているディーゼルの価値観を大切にして、希望のメッセージを伝えたい」とおっしゃっていましたが、あなたが今回のコレクションを通して伝えたいポジティブなメッセージとは何ですか?
G 今回のコレクションのインスピレーションは、ディーゼルの伝統とブランドのコアバリューに根差していますが、それを再構築し、よりコンセプチュアルなアプローチと融合させたもので、ウォッシュ加工、トリートメント、マテリアルミックス、カラー、グラフィックなどにも表れています。私たちは、世界で最も優れたデニムの知識を持っていることを常に忘れず、社会的、環境的に持続可能なブランドであることを常に意識しています。
TEL 0120-55-1978
www.diesel.co.jp