THE JOHN COLTRANE DOCUMENTARY CHASING TRANE

ジョン・コルトレーンは、帝王、マイルス・デイヴィスと並び、ジャズ史上最大のカリスマとも称される名サックスプレーヤー。1946年にプロとしてのキャリアをスタートするも、意外にも最初の10年は無名で陽の目が当たることはなかった。しかし、1957年にリリースされた初期の代表作｢ブルー・トレイン｣や、ピアニストのセロニアス・モンクとの共演を経て、“シーツオブサウンド”と呼ばれる独自の奏法を確立すると、一気にその才能は覚醒していく。以降の10年間で「ジャイアント・ステップス」(1960年)、デューク・エリントンとの共演盤「デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン」(1963年)、ジャス史に残る歴史的名盤「至上の愛」(1965年)など、数々の傑作を発表。死後50年以上経過した今でもその功績は色褪せることなく、90年代のUSヒップホップシーンを代表するプロデューサー、DJプレミアは、「至上の愛」を“これこそスタンダードであり、今すぐ聴くべき1枚”と評し、日本のトラックメーカー、ヌジャベスは生前「マイ・フェイバリット・シングス」(1961年)をフェイバリットに挙げるなど、後世のフォロアーを数多く生み出している、また、NYC発のブランド、シュプリームは、アルバム「至上の愛」の原題( A LOVE SUPREME)にちなみ、同アルバムのアートワークをあしらったプロダクトを今年発表。レジェンドスケーター、ゴンズことマーク・ゴンザレスは、自身のフッテージのBGMにコルトレーンの楽曲を使用するなど、その影響力は音楽界のみならずユースカルチャーやポップカルチャーまで広くおよぶ。

コルトレーンの生誕95周年となる今年、待望の日本劇場公開が実現した本作では、不遇な時代を過ごしたキャリア初期をはじめ、ドラッグとアルコール依存症から脱却し才能を開花させた1957年、そしてジャズ史を鮮やかに更新する名盤を次々と作り出していく様子を、サックスプレイヤーのソニー・ロリンズやラッパーのコモンといったコルトレーンの影響下にあるアーティスト等の証言をもとに紹介する。また、これまであまり知られることのなかった彼の家族やプライベートについても描かれており、上質なドキュメンタリー作品としてジャズファン以外も楽しめる内容となっている。

コルトレーンは、キャリア絶頂期の1966年7月に来日公演を行うと、それから1年後の1967年7月に40歳の若さで肝臓癌により急逝しており、わずか10年の間にアメリカはおろか世界のポピュラーミュージック史に偉大な足跡を刻んだことになる。その短くも求道的な人生、そして今なお多くの人に愛され続ける不世出のジャズマンの姿を、ぜひ劇場のスクリーンで目に焼きつけてみてはいかがだろう。

INFORMATION

ジョン・コルトレーンチェイシング・トレーン

12月3日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷他全国ロードショー

監督：ジョン・シャインフェルド
出演：ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、マッコイ・タイナー、ウェイン・ショーター、ベニー・ゴルソン、ジミー・ヒース、レジー・ワークマン、ウィントン・マルサリス、カマシ・ワシントン、カルロス・サンタナ、コモン、ジョン・デンスモア(ザ・ドアーズ)、ビル・クリントン(元アメリカ合衆国大統領)、藤岡靖洋、デンゼル・ワシントン(コルトレーンの声)他
2016年｜アメリカ｜99分
配給：Eastworld Entertainment/カルチャヴィル
©︎MMXVII Morling Manor Music Corp. and Jowcol Music, LLC.

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