写真家 森山大道を追ったドキュメンタリー作品｢過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家  森山大道｣が、4月30日(金)より劇場公開される。

本作は、日本を代表する写真家であり、世界的な評価も高い森山大道のドキュメンタリーフィルムとしては初の劇場用作品となる。監督を務めたのはこれまで数々のドキュメンタリー番組を手掛けてきた岩間玄。森山大道の創作活動を記録した映像としては最も古く、貴重なものである1996年放送の美術番組｢路上の犬は何を見たか？ 写真家 森山大道1996｣の製作を担当して以来、およそ4半世紀にわたり森山大道との親交を深めてきた。

撮影は2018年に行われたもので、当時80歳だった森山大道の姿と、これまで発表してきた写真の数々、さらに1968年に刊行されたデビュー作｢にっぽん劇場写真帖｣復刊プロジェクトの様子が、シャッフルされる形でストーリーは進んでいく。新宿をはじめ、池袋や渋谷、蒲田に羽田までコンパクトカメラ片手に東京中を彷徨い、淡々とシャッターを切る森山。そして彼の創作活動を語る上で欠かせない編集者の神林豊と造本家、町口覚が、今やコレクターズアイテムと化し、その全容が一般の目に触れることがほとんどなかった幻の傑作をこの世に送り出すべく、奮闘していく姿が丁寧に拾い上げられ、そして過去と現在、そして未来を行き来するように繋がれていく。その中で魔法のような傑作はどんなふうに生まれるのか。決定的瞬間とは何なのか。謎めいた写真家の素顔を、映画はすこしずつ解き明かしていく。

また、本作のキャッチコピーである“いま、明らかになる孤高の天才(レジェンド)の素顔。写真史上、最大の謎(エニグマ)に迫る前人未到のドキュメンタリー”という、やや大上段に構えた言葉に対し、ナレーションによる解説を極力抑え、出演者の発話と時折り挟まれる最低限の文字情報という、余分なものを一切排した作りは鑑賞者をスクリーンに映る風景の一部にいるかのように自然と誘う。反面、三宅一徳による時に大仰にも映るほどのダイナミックかつ高揚感を煽る音楽が、観る者をいやがおうにも作品の中に没入させ、加速するかのように気持ちを駆り立てていく。この辺りのコントラストを効かせた構成も実に秀逸といえるだろう。