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日本ポップアート界の巨匠,田名網敬一の個展
「世界を映す鏡」が,東京の2会場を舞台に開催。
ART Nov 15, 2022
1960年代からの半世紀以上ものキャリアを誇り、80歳を超えてもなお新たな作品を生み出し続ける巨匠、田名綱敬一の個展「世界を映す鏡」が開催中。本展は、2020年7月に開催された展覧会「記憶の修築」、そして、今年9月にニューヨークのVenus Over Manhattanにおいて開催された「Manhattan Universe」に続く新作個展である。
コロナ禍に見舞われた世界の中で、予定していた海外の展覧会、大学での講義、様々なプロジェクトなどが止まり、田名綱の制作活動は一変。締め切りやスケジュールに追われるという若い頃から60年以上も続いてきたルーティンから意図せず開放され、“このこと”が田名網の作品に意外な副産物を齎したという。
田名綱は、日課として毎日4、5点のF6号キャンパスにピカソ作品の模写を描くようになり、これまでの3年近い期間の間に、既に400点を優に超えるピカソの模写作品を繰り返し制作している。最初の1枚目はピカソの画集を横に見様見真似で描き、2枚目は自分の描いた作品をベースに作製、続く3枚目以降は直近の視覚的な記憶をたどり、自分で好きなようにアレンジを施していく。その結果、あたかも絵画版の伝言ゲームのように少しずつ異なる作品が誕生し、やがてオリジナルのピカソシリーズが生まれてくるようになった。
田名網自身が“写経のようなもの”と語るこうした創作活動は、決して幼稚なパクリや盗用の類ではない。自然の模倣に起源を持つ“アート”の歴史において、アーティストが他のアーティストの作品を模したという例は多々あり、科学者が他人の論文を参考にして研究や実験の深度を深めるように、あるいはアスリートがライバルの動きを研究するように、人は知的情報のほとんどを模倣や伝聞を通して得る。これは、“アート”においても同じであり、模写を通してアーティストは表層的な情報に限らず、独特の視点、独自の技術、秘められた思考的な背景といった細部に至るまでの情報を学んでいる。
本展では、NANZUKA UNDERGROUND1階スペースにて、こうして生まれた300点ほどのピカソシリーズ作品に加え、移動式販売スタンド(Kiosk)を模したインスタレーションを中心に展開される。ギャラリー2階と3110NZ by LDH kitchenでは、引き続き膨大なイメージの蓄積から生み出される新作のキャンパスペインティング、コラージュ作品、さらには、最新のアニメーション作品「赤い陰影」を展示。年輪を刻んで尚も進化を遂げ続ける田名網の新たな作品を作り出す過程には、人間の創作活動の真髄を見るようであり、また同時に“アート”とは何かという率直な問いかけに対する雄弁な回答であるようにも思える。不屈の創作魂、膨大な知識と経験、熟練の技術の三位一体によって生み出される田名網の圧倒的な作品の数々は、衰えることを知らない。
田名網敬一の新作個展「世界を映す鏡」は、NANZUKA UNDERGROUNDと3110NZ by LDH kitchenの2会場にて開催中。また、渋谷PARCO2階にあるNANZUKA 2Gでは、非営利目的海洋環境保護団体「Parley for the Oceans(パーレイ・フォー・ジ・オーシャンズ)」とのコラボレーションによって制作された桐製の限定サーフボードを展示するポップアップが、11月16日(水)までオープン。なお、本ポップアップの利益は、「パーレイ」より海洋保護のために使用されるという。
会期:開催中(12月25日まで)
会場:NANZUKA UNDERGROUND
東京都渋谷区神宮前3-30-10
TEL:03-5422-3877
会期:開催中(12月24日まで)
会場:3110NZ by LDH kitchen
東京都目黒区青葉台1-18-7
TEL:03-5422-3351
会期:開催中(11月16日まで)
会場:NANZUKA 2G
東京都渋谷区宇田川15-1 渋谷PARCO 2階
TEL:03-3464-5111
東京都渋谷区神宮前3-30-10
TEL 03-5422-3877
nanzuka.com