NEW GENERATION, NEW WAVE
ABOUT OCT, 2024
NANZUKAでは、アメリカ人アーティスト、クリスチャン・レックス・ヴァン・ミネンの日本初個展を東京の2会場で同時開催している。
クリスチャン・レックス・ヴァン・ミネンは、アメリカ ロードアイランド州にあるプロビデンス出身のペインター。現在は、カリフォルニア州サンタクルーズを拠点に制作活動を行っている。
その作風は、近現代のニューエイジ的な神秘主義、デスメタル、ポルノ、タトゥー、インターネットミーム、サーフカルチャー、SNSといった21世紀の多様で混沌とした文化の要素を雑多に取り込んだもので、タトゥーを纏った肉塊や生命を宿したゼリーが乱舞する摩訶不思議な画面は、強烈なインパクトを放つ。しかし、その一見グロテスクにも思える作品の背景には、ヤン・ファン・エイクやヒエロニムス・ボスといった「初期フランドル派」の影響が見てとれる。ヴァン・ミネン自身が、15世紀フランドル地方で独自の発展を遂げた油彩絵画の古典的な技法を踏襲しているのに加え、「初期フランドル派」に潜む“風刺性”や“寓話性”をヴァン・ミネン作品もまた内包しているからだ。例えば、ヒエロニムス・ボスの作品「快楽の園」で描かれている露悪的な様相は、かつてはキリスト教における戒律や教訓を示すものであった。しかし、その宗教における規範的な要素は現代において超現実的な想像力、ブラックユーモア、多様性への理解、偏見への反抗、あるいはカタルシス作用といった別の軸を持って解釈することも可能で、ヴァン・ミネンは、様々なエレメントや主義主張が入り混じる様を“アイデンティティの解剖図”と称している。
私たちの心の暗部を見つめ、恐れや偏見を分類すること。人種や階級、セクシュアリティといった枠組みを解体して捉えること……。偉大な先達も対峙してきたであろうお題目に対し、ヴァン・ミネンは、透明で艶のある薄い顔料を幾層にも塗り重ねるという600年前に開発された技法を用いて、ダークで特異な世界観の中でこそ光を放ち、真価を発揮する幻想的な安堵を表現しているのである。
なお、3会場での同時開催で行われる本展では、NANZUKA UNDERGROUNDで新作のペインティングを中心にヴァン・ミネン自身がペイントを施した立体作品を、3110NZではモノタイプ版画の技法を駆使して制作されたユニークな作品が展示されている。(渋谷パルコ NANZUKA 2Gでの展示は会期終了)。グロテスクでありながら、どこかユーモアを感じさせる作品に秘められた古典からの影響と、アイデンティティの多面性を感じとってみてはいかがだろうか。
会期:開催中(9月26日まで)
開廊時間:11:00~19:00
休廊日:月、祝日
入場料:無料
会場:NANZUKA UNDERGROUND
東京都渋谷区神宮前3-30-10
会期:開催中(9月18日まで)
開廊時間:11:00~16:00
休廊日:日、月、祝日
入場料:無料
会場:3110NZ by LDH kitchen
東京都目黒区青葉台1-18-7
TEL 03-5422-3877
www.nanzuka.com