NEW GENERATION, NEW WAVE
ABOUT OCT, 2024
テキスタイル,家具,調度品など,計169点を紹介!
“アーツ・アンド・クラフツ”運動に迫る展覧会。
ART May 20, 2022
イギリスの詩人/思想家/デザイナー、ウィリアム・モリスが提唱したデザイン運動にフォーカスを当てた展覧会「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」が、広島県福山市にあるふくやま美術館にて6月5日(日)まで開催中。
“アーツ・アンド・クラフツ”とは、19世紀後半のイギリスで誕生し、国内外で隆盛した日常生活を取り巻くあらゆるものを巡るデザイン運動の総称。18世紀後半に起こった産業革命に伴い出現した機械による劣悪な量産品を否定し、中世から続く職人によるハンドメイドの良品に価値を見出すことで、人々の暮らしに豊かさをもたらそうとしたものである。この芸術運動を先導したウィリアム・モリスは、職人と芸術家たちによる商会を設立し、高い技術で制作されたテキスタイルや美しい壁紙、家具、調度品など、生活に彩りをもたらす多様な製品を世に送り出した。
ふくやま美術館では、ウィリアム・モリスの壁紙に着目した展覧会を2019年に開催。3年振りとなる本展では、ウィリアム・モリスとその商会によるテキスタイルや家具のみならず、より幅広い様々なジャンルの作品、計169点を展観し、当時、英国を起点にヨーロッパ大陸やアメリカ、日本にまで伝播し、各地で新たなデザインが生み出されるきっかけとなった、アーツ・アンド・クラフツ運動の広がりと多様性を探っていく。
本展は、全4章で構成されており、第1章の“モリス・マーシャル・フォークナー商会とモリス商会”では、ウィリアム・モリスと仲間たちが設立した同商会が生み出した精緻な壁紙や、インディゴ抜染法にカラフルな色を組み合わせた高価なテキスタイル(作品名「いちご泥棒」)に加え、1891年にモリスが設立したプライベート プレス「ケルムコット・プレス」の手作業で作られた美しい装丁の書籍などが紹介される。
第2章の“アーツ・アンド・クラフツ展覧会協会”では、それまでイギリスの美術界ではぞんざいに扱われてきた装飾美術を通して、モリスの思想や哲学を普及させた同協会の活動に着目。イギリスの伝統的なクラフツマンシップが息衝いたW.A.S.ベンソンによるガラスのランプシェードをはじめ、ウォルター・クレインやC.F.A.ヴォイジーなど、協会の主要メンバーだった作家の作品を展示する。また、“英国におけるアーツ・アンド・クラフツの展開”と銘打たれた第3章では、ジュエリー、ガラス、金工、テキスタイルなど、多様なジャンルを介して、 イギリス各地に広がったアーツ・アンド・クラフツ運動の取り組みを紹介。芸術と工芸の職人コミュニティ「ギルド・オブ・ハンディクラフト」の創設者であり、職人たちと共同生活、共同作業を行いながら、カントリーサイドでの理想郷を目指した建築家/工芸家、チャールズ・ロバート・アシュビーが製作した日用品などを展開する。
アメリカに飛び火したアーツ・アンド・クラフツ運動の独自性に注目した第4章では、「ティファニー」創業者の息子で、ガラス作家でもあるルイス・コンフォート・ティファニーが設立したガラス工房「ティファニー・スタジオ」の卓上ランプや、日本の帝国ホテル、自由学園明日館などをデザインした20世紀を代表する建築家、フランク・ロイド・ライトのステンドグラスドアなどを展示。材料の正直な使用や、有機的な美への回帰といったアーツ・アンド・クラフツ運動との共通点を見出すと共に、アメリカの地で結実した多様な試みを展観する。
劇的に利便性が向上した時代において、人々の働き方や生活そのものを見直す示唆を与えたアーツ・アンド・クラフツ運動。現代の芸術家や作家にも多大な影響を及ぼしたその奥深き世界を、ぜひ実際に体感してみてはいかがだろうか。
会期:開催中(6月5日まで)
会場:ふくやま美術館|広島県福山市西町2-4-3
TEL:084-932-2345
時間:9:30~17:00
*5月27日(金)、28日(土)、6月3日(金)、4日(土)は19:00まで開館
休館日:月曜
観覧料:一般 ¥1,000(¥800)、高校生以下無料
*()内は前売りまたは有料20名以上の団体料金
www.city.fukuyama.hiroshima.jp/site/fukuyama-museum