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ABOUT JAN, 2025
菊竹清訓が設計したメタボリズム建築の名作と,
デザイン家具の魅力に触れる1日限りの展覧会。
ART Nov 19, 2021
日本を代表する建築家、菊竹清訓が手掛けた群馬県 館林にある旧館林市庁舎の保存運動の一環として企画された、建築やデザインにまつわるエキシビジョンが、11月23日(火、祝)に市内にある文化施設3箇所で同時開催される。
1963年に竣工した旧館林市庁舎は、「自邸スカイハウス(1958竣工)」や、「出雲大社庁の舎(1963竣工)」の設計で知られる戦後日本を代表する建築家、菊竹清訓が設計を担当。同庁舎は、菊竹が1970年代に黒川紀章や川添登らと提唱した建築運動“メタボリズム”(社会の変化や人口の成長に合わせて有機的に成長する都市及び建築のイメージ)を具現化した名作であり、現在は市庁舎としての役目を終えて市民センターとして活用されている。今回のイベントは、館林を拠点に活動し、「建築」、「デザイン」、「家具」を愛好する国内有数のショップやギャラリーなどが業界の垣根を超えて企画したもので、旧館林市庁舎に焦点を当てながら、館林の街とモダンデザイン家具の魅力を多角的に発信する。
旧館林市庁舎を舞台に開催される「メタボリズム建築と旧館林市庁舎」展は、菊竹清訓による当時の建築図面や、オリジナルの関連家具などが展示される。中でも注目は、グラフィックデザイナー、田中一光によるタイポグラフィ関連の資料だ。建物の計画段階で、菊竹清訓は当時若くして頭角を表していた田中一光に細部のデザインと色彩計画を依頼。1960年代当時、建築の分野においてグラフィックデザイナーが参画することは非常に稀であり、それ自体が菊竹清訓の先見性や意欲的な意図を物語っている。また、本展では普段解放していない同庁舎の屋上を1日限定(時間制)で解放。屋根の構造に特徴を持つ旧館林市庁舎の建築的な面白さに触れると共に、ライトアップによって見え方が変化していく菊竹建築の魅力を再発見することができる。
「ART & DESIGN TATEBAYASHI 椅子」展と題したエキシビジョンは、館林市内の「武鷹館」と「秋元別邸」の2会場で開催される。民芸を中心に展示する「武鷹館」に対し、「秋元別邸」では、坂倉準三、渡辺力、柳宗理、長大作、倉俣史朗、内田繁、黒川紀章、長谷川逸子、剣持勇などのジャパニーズモダンの貴重なオリジナル家具作品に加え、シャルロット・ペリアンやピエール・ジャンヌレなどが手掛けたデザイナーズ家具を展示。モダンデザインのマスターピースと美しい日本家屋の調和を試みることで、家具と空間コーディネートの魅力を見つめ直し、新たな価値と創造性を見出すことを目的としたエキシビジョンとなっている。
菊竹清訓が手掛けた「出雲大社庁の舎」が、経年劣化を理由に2016年に解体されたように、近年全国的にメタボリズム建築の名作が建て壊しによって次々と減少しているという。旧館林市庁舎も例外ではなく、今後老朽化がさらに進めばその議論の俎上に載せられることは想像に難くない。本展は、私たちがこれまで気付くことのなかった自らの文化的財産の価値や多様な地域性を改めて見つめ直し、性急なスクラップ&ビルドが加速する現代において名建築の再生と保存、再活用の在り方の視点をより豊かにするものである。加えて、日本の地方都市におけるローカリズムという側面から見ても意義深いイベントといえるだけに、館林への小旅行も兼ねて、ぜひ足を運んでみてはいかがだろう。
会場:館林市市民センター(旧館林市庁舎)
群馬県館林市仲町14-1
会期:11月23日(火/祝) *1日のみ限定
時間:10:00~17:00
会場:武鷹館
群馬県館林市大手町5-10
会期:11月23日(火/祝) *1日のみ限定
時間:10:00〜15:00
会場:旧秋元別邸
群馬県館林市尾曳町8-1
会期:11月23日(火/祝) *1日のみ限定
時間:10:00〜15:00
主催:館林市役所産業開発課
企画:TBRI(東毛建築リサーチ研究所)
協力:館林市役所産業開発課、Objet d’ art、ATELIER GALLERY、garage、田部井石材