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「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督と音楽家,
石橋英子の協業から生まれた「悪は存在しない」。
ENTERTAINMENT Apr 5, 2024
「ドライブ・マイ・カー」(2021)で、アカデミー賞国際長編映画賞を獲得するなど、国際的にも高く評価される濱口竜介監督の最新作「悪は存在しない」が、4月26日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下他にて全国公開される。
監督を務めた濱口竜介は、前述のアカデミー賞に加え、カンヌ国際映画祭で脚本賞を、「偶然と創造」(2021)では、ベルリン国際映画祭の銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞。そして、本作「悪は存在しない」が、第80回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(審査員グランプリ)と国際映画批評家連盟賞を受賞した。なお、アカデミー賞と世界三大映画祭すべてを受賞したのは、日本人として黒澤明監督以来の快挙となる。
本作誕生のきっかけとなったのは、「ドライブ・マイ・カー」で劇伴を担当したシンガーソングライター、石橋英子からの映像制作のオファーだったという。2人で試行錯誤を重ね、濱口監督が選んだのは「従来の制作手法でまずは1つの映画を完成させ、そこから依頼されたライブパフォーマンス用映像を生み出す」という独自のアプローチ。そうして生まれたのが、石橋のライブ用サイレント映像「GIFT」と長編映画「悪は存在しない」である。
物語の舞台となる長野県水挽(みずびき)町は、自然が豊かな高原に位置する街。東京からも近く、移住者は増加傾向でごく緩やかに発展していた。代々そこで暮らす巧(大美賀均)とその娘、花(西川玲)の暮らしは、水を汲み、薪を割るような、自然に囲まれた慎ましいものだった。しかしある日、彼らの住む近くにグランピング場を作る計画が持ち上がる。コロナ禍のあおりを受けた芸能事務所が政府からの補助金を得て計画したものだったが、森の環境や町の水源を汚しかねないずさんな計画に町内は動揺し、その余波は巧と花の生活にも及んでいく……。
濱口監督自身も「初めての経験だった」と語るように、映画と音楽の領域を横断する制作スタイルを経て完成した本作は、ヴェネツィア国際映画祭でのグランプリ受賞を皮切りに、各国での上映や映画祭へと波及。以降、世界中から絶賛されるなど、本人たちの想像を大きく超えた景色にまでたどり着いた。また、本作の主演を務めた大美賀均は、当初スタッフとして映画に参加していた本職ではない俳優。他にも新人ながら瑞々しい演技で鮮烈な印象を残す西川玲や、物語のキーパーソンとして重要な役割を果たす人物に小坂竜士と渋谷采郁らが脇を固めており、キャスティングの妙も光る。
「濱口(監督)の知的で変幻自在な作品は観客に驚きを与え続け、答えるのに一生かかるような問いを突きつける」(米「Deadline」)。この論評が指し示すように、観る者誰もが無関係でいられなくなるような魔法にかける本作をぜひお見逃しなく。
4月26日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、K2他、全国順次公開
監督、脚本:濱口竜介
音楽:石橋英子
撮影:北川善雄
録音、整音:松野泉
編集:山崎梓
出演:大美賀均、西川玲、小坂竜士、渋谷采郁、菊池葉月、三浦博之、鳥井雄人、山村崇子、長尾卓磨、宮田佳典、田村泰二郎
2023年|106分|日本|カラー|1.66:1/5.1ch
配給:Incline
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