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アンダーグラウンドコミックを代表する漫画家,
ロバート・クラムの奇妙で赤裸々なドキュメント。
ENTERTAINMENT Feb 16, 2022
1960年代に始まったアメリカのアンダーグラウンドコミックを代表する漫画家/イラストレーター、ロバート・クラムのドキュメンタリー映画「クラム」が、2月18日(金)より新宿シネマカリテ他で公開される。
1943年フィラデルフィア生まれのロバート・クラムは、20代でサンフランシスコに移り住み、アンダーグラウンド コミックの先駆けとなった漫画雑誌「ZAP」の創刊に参加。街角で手売りされたその雑誌が編集者の目にとまり、クラムは本格的に漫画家としてのキャリアをスタートする。その後、「フリッツ・ザ・キャット」、「ミスター・ナチュラル」といったカウンターカルチャーを象徴するキャラクターを生み出し、また、ジャニス・ジョップリンのアルバム「チープ・スリル」のアートワークを手掛けるなど、60年代後半のアメリカにおいて一躍脚光を浴びる存在となった。
以降もアメリカ社会や自分自身をモチーフにした膨大なコミックを発表し続け、80年代に入ると彼の描く原画やイラストが美術オークションで取り引きされるなど、アートとしての評価を確立。1991年に家族と南仏へと移住した後も創作活動を続け、2009年に発表した聖書に自身のフェティッシュを取り込んだ異形のストーリー「旧約聖書 創世記編」は、シアトル美術館でレンブラントやゴヤといった、美術史に名を残す画家と比較展示されて大きな話題を呼ぶなど、今なおそのプレゼンスを発揮している。
本作は、1996年に日本で初公開されたもので、今回、約25年振りのリバイバル上映となる。過激で辛辣、ときに性への妄想や執着を露悪的に表現したコミックを描き続けたクラムにカメラを向けた“WEIRD(奇妙)”なドキュメンタリーといえる。戦前のブルースへの偏愛、共に精神を病んでいる兄と弟からの影響、作風に大きな影響を与えたLSDの摂取、女性に対する過度な恐怖心と臀部や太ももへの妄執といった特異な性的嗜好など、コミックに劣らず風変わりでナイーブな人物像と彼を生み出した家庭環境、そして自由の国、アメリカのダークサイドを映し出す。
クラムは自身の作品について、抱えきれないほどの欲望やトラウマが“僕を突き抜けて紙の上に出たがっているんだ”と語る。その正気と狂気の間をたゆたう偏執的な世界観は、単純な善悪で図ることのできない新たな価値観を鑑賞者に提示するようでもある。アメリカン ポップカルチャーにおいて最も暗く輝くスター、ロバート・クラムの半生記「クラム」をお見逃しなく。
2月18日(金)より新宿シネマカリテ他全国順次公開
監督:テリー・ツワイゴフ
出演:ロバート・クラム、チャールズ・クラム、マクソン・クラム、アリーン・コミンスキー
配給:コピアポア・フィルム、オープンセサミ、Lesfugitives
1994年|アメリカ|カラー|スタンダード|モノラル|120分
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