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“伝説のフェミニスト” グロリア・スタイネムと,
その仲間たちによる闘いの軌跡を描いたドラマ。
ENTERTAINMENT May 19, 2022
1960年代から70年代にかけて、女性解放運動のパイオニアとして活躍したグロリア・スタイネムと、活動家の仲間たちを描いた伝記映画「グロリアス 世界を動かした女たち」が、kino cinéma横浜みなとみらい他にて公開中。
グロリア・スタイネムは、米オハイオ州出身のアクティビスト/ジャーナリスト。1971年に設立された「女性行動連盟」をはじめ、いくつもの団体の創設に関わるなど、女性の社会進出や権利向上に尽力。ジャーナリストとして様々な媒体で執筆活動を行うだけでなく、88歳となる現在でも全米の大学で講演活動を行うなど、アメリカのフェミニズム運動を牽引するアイコンとして知られている。
本作は、そんな波乱に満ちたグロリア・スタイネムの生涯を描いたもので、若き日の彼女を演じたのは「リリーのすべて」で、アカデミー賞助演女優賞に輝いだアリシア・ヴィキャンデル。そして、40代以降の人生を「アリスのままで」で同賞の主演女優賞を獲得したジュリアン・ムーアが、リレー形式で演じた。また、活動家の盟友として、人気ミュージシャンであり、近年は俳優としての活躍も目覚ましいジャネール・モネイ、さらに「ローズ」、「フォー・ザ・ボーイズ」などで知られる名俳優、ベット・ミドラーが脇を固めた。監督はメキシコの画家、フリーダ・カーロを描いた作品「フリーダ」などで知られるジュリー・テイモアが務め、自由奔放で解放的なイマジネーションを駆使して、グロリアと仲間たちのほとばしるドラマを巧みに描いた。
物語はグロリアの学生時代にまで遡る。大学生でインドに留学をした彼女は、男性から虐げられている女性たちの悲惨な経験を聞き、帰国後はジャーナリストとして働き始める。だが、社会的なテーマを希望しても、女だからとファッションや恋愛のコラムしか任されない。そこでグロリアは、実業家であり、雑誌「PLAYBOY」の創刊者、ヒュー・ヘフナーが設立した高級クラブ「プレイボーイ・クラブ」に自らバニーガールとして極秘潜入。その内幕を記事にして暴き、女性を商品として消費する実態を告発する。さらにはTVの対談番組に出演するなど、徐々に女性解放運動の活動家として知られ始める。40代を迎えた頃、仲間たちと共に女性主体の雑誌「Ms」を創刊。これは、未婚女性=Missや既婚女性=Mrs.とは別に、どんな女性にも使える新しい敬称=Ms.として、全米各地の女性に受け入れられていく……。
劇中では、潜入取材で名を上げた若き日のグロリアが、職場の男性から「次はポルノクラブに潜入か?」と当てこすりされるシーンや、悪意のない女性らしさを強いられたグロリアが自らの意思を貫く場面など、現代社会に置き換えても身につまされることや、考えさせられる点も多い。今でこそ、従来のジェンダー規範は変わりつつあるとはいえ、“フェミニズム”という概念がより一般的になって以降、過剰な女性叩きやミソジニーだけでなく、“女性の敵は女性”といった悪しき言葉に象徴される、反フェミニズム的なムードはむしろ酷くなっているようにも思える。“これは、彼女たちと、あなたの物語……” 本作のポスターには、こんなキャッチコピーが添えられている。グロリア・スタイネムと仲間たちの勇敢な姿にすべての女性たちがエンパワーメントされるのはもちろん、男性にとっても自身の価値観や古い考え方を更新するきっかけを与える作品といえよう。
kino cinéma横浜みなとみらい他にて全国公開中
監督、脚本:ジュリー・テイモア
出演:ジュリアン・ムーア、アリシア・ヴィキャンデル、ティモシー・ハットン、ジャネール・モネイ、ベット・ミドラー
2020年|アメリカ|英語|147分|カラー|ビスタ|5.1ch
原題:The Glorias
字幕翻訳:髙橋彩/G
配給:キノシネマ
©2020 The Glorias, LLC
movie.kinocinema.jp/works/theglorias