NEW GENERATION, NEW WAVE
ABOUT APR, 2025
クローン人間との対峙を通して己の死生観を問う,
甲斐さやか監督の新作「徒花-ADABANA-」。
FASHION Oct 31, 2024
映画「赤い雪 Red Snow」以来、5年振りとなる甲斐さやか監督の新作「徒花-ADABANA-」が、テアトル新宿他にて全国公開中。
本作の監督を務めた甲斐さやかは、少年失踪実験を題材にした作品「赤い雪 Red Snow」(2019)で鮮烈な長編監督デビューを果たし、第14回JAJFF(Los Angeles Japan Film Festival)最優秀作品賞を受賞するなど、今や国内外問わず注目を集める映画人のひとり。そんな甲斐監督が、20年以上の歳月をかけて構想、脚本執筆を手掛け、井浦新と水原希子の2人を主演に迎え、日仏合作で作り上げたのが今作である。
物語の舞台は、ある最新技術を用いた延命治療が国家主導で推進されるようになった近未来。裕福な家庭で育った新次(井浦新)は、妻との間に一人娘も生まれ、周りから見れば誰もが望むような理想的な家庭を築いていたが、死の危険を伴う重い病に侵され、病院で療養していた。手術を控えて不安にかられた新次は、心理状態をケアしてくれていた臨床心理士のまほろ(水原希子)の提案で、自身の過去についての記憶をたどりはじめ、海辺で知りあった謎に包まれた“海の女”や、幼い頃に母からかけられた言葉を思い出していく。記憶を呼び起こしたことでさらに不安を募らせた新次は、まほろに“それ”という存在に会わせてほしいと懇願する。“それ”とは、一部の上流階級の人間が病に冒された際に身代わりとして提供される、自分と全く同じ見た目で現在の自分とはまるで異なる内面を持つもうひとりの自分であった……。
主演を務めた井浦新と水原希子以外にも、謎めいた“海の女”役に、アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」(2021)で一躍注目を浴びた三浦透子、さらに斉藤由貴、永瀬正敏、原日出子などの実力派が脇を固めた。また、本作の編集は「落下の解剖学」(2023)で第96回アカデミー賞編集賞にノミネートされたロラン・セネシャルと「ドライブ・マイ・カー」編集担当の山崎梓が担当。他にもそれぞれの分野において第一線で活躍するスタッフが甲斐監督の元に集結し、その中で生まれる美しい化学反応が本作にも反映されている。
甲斐さやか監督は、“無駄な花”を意味するタイトルの「徒花」について、古来の日本文化が持つ諦念の美学を見出すとともに、この映画で改めて見つめ直そうとする“満たされた空虚”が内包していると解く。常に満たされることを追い求めてきた私たちに新たな示唆を与える「徒花-ADABANA-」を、ぜひお見逃しなく。
テアトル新宿他にて全国公開
脚本、監督:甲斐さやか
出演:井浦 新、水原希子、三浦透子、甲田益也子、板谷由夏、原日出子、斉藤由貴 、永瀬正敏
プロデューサー:布川 均、宮田公夫、ビックァン・トラン、赤澤賢司、上野弘之
キャスティングディレクター:杉山麻衣 撮影:高木風太 照明:後閑健太 録音/音響効果:小川 武 美術:河島 康
編集:山崎 梓、ロラン・セネシャル VFX:菅原悦史 衣装デザイン:前田敬子(LOISIR) 劇中アートディレクション:小林和史
助監督:近藤有希 制作担当:久保田辰也 ラインプロデューサー:古賀奏一郎 音楽:長屋和哉 音楽プロデューサー:akiko
クリエイティブディレクター:佐倉康彦 タイトルロゴ/宣伝美術:日高英輝
制作プロダクション:ROBOT DISSIDENZ
配給、宣伝:NAKACHIKA PICTURES
Ⓒ2024「徒花-ADABANA-」製作委員会/DISSIDENZ
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