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ABOUT DEC, 2024
イタリアのモダニズム運動から着想を得た,
ナヌーシュカのリゾートコレクション。
FASHION Jul 26, 2021
ハンガリー ブダペスト発のブランド、ナヌーシュカは、2022リゾートコレクションを発表した。
「マテリアル フォーム」と題された本コレクションは、1960年代のイタリアのモダニズム運動“アルテ・ポーヴェラ(貧しい芸術)”に関連し、型破りな素材の探求を試みたもの。“アルテ・ポーヴェ”が掲げた、「芸術は伝統的な慣習や素材の制約から解き放たれて作ることができる」というコンセプトを、クリエイティブ ディレクターを務めるサンドラ・サンダーなりに新たな解釈を加えた。
「さまざまな素材を使用してデザインの創造力に挑戦することで、衣服の芸術的可能性をどのように再定義できるかを考えました」とサンドラ・サンダーが語るように、本コレクションには、伝統的なベッドリネンに使われるコットンパーケールを反映した新鮮なポプリン生地で表現したシャツやパンツ、家庭的な温かみと高級感を兼ね備えたウールブークレを採用したアイテムなどが登場。素材の持つ質感と触感を重視し、見た目や第三者に与える影響だけでなく、まず衣服を着る人自身が身体に触れてどのように感じるのかを考えて作られている。加えて、素材を活かした大胆で印象的なシェイプや、トランシルヴァニアの民族衣装からインスパイアを受けたアコーディオンプリーツ、幾何学模様として落とし込まれているハンガリーの伝統的なカットアウトの手法など、繊細なディテールワークやテクニックにも目を見張るものがある。
また、ナヌーシュカの根幹を成すサステナビリティもコレクション全体に通底している。3Dのスリップトップに用いられているブランド独自の素材「ドリブルリボン」は、100%リサイクルされたポリエステルリボンから作られており、30年以上使われていなかった専用の機械を使用し、9ヶ月間かけて開発されたという。また、折り紙から着想を得たパテントヴィーガンレザーを使用した手編みのカゴやアップサイクル素材の端材を使用したバスケットバッグなど、アクセサリー類を含めて随所に持続可能性へのこだわりが見てとれる。
さらには、製作過程におけるフェアネスも本コレクションの特筆すべき点である。各種アイテムに採用されている「ヘイジ―フローラルプリント」は、韓国のファッション専門学校の卒業生で、ブダペストにあるナヌーシュカのスタジオでペイドインターンシップ(報酬を得られるインターン制度)に参加していたジャネット・リーによってデザインされたもの。彼女は、黒人、アジア人、少数民族のコミュニティからの若いファッションの才能をサポートする「ナヌーシュカ デザイン フォー ライフ メンターシップ プログラム」の最初の受賞者のひとりであり、このプリントデザインの利益の20%を受け取ることができる。ファッションに限らずクリエイティブといわれる業界では、近年、本人の夢ややる気と引き換えにその才能と労働力を安く買い叩く“やりがい搾取”が問題となっているだけに、このようなナヌーシュカの先導的なアクションには、今後も注目したい。
「マテリアル フォーム」の本質的なエネルギーを形にしたナヌーシュカの2022リゾートコレクションは、公式オンラインストア及び取扱店で順次発売される。
TEL 03-5771-8809
www.nanushka.com