NEW GENERATION, NEW WAVE
ABOUT JUN, 2026
“世界の交差点”から放たれた「GucciCore」,
ショーに参席した本誌編集長Real Report。
FASHION May 27, 2026
物心ついた頃から憧れ続け、アルバイトで貯めたなけなしのこづかいを握りしめて、初めての海外旅行として選んだ街、ニューヨーク。ヒップホップやスケートボード、クラブカルチャーが、まだアンダーグラウンドだった1995年、街中がすさまじいエネルギーに満ち溢れていた。その後もニューヨークに魅了され続け、ヒップホップ/ブラックカルチャーマガジンの編集者として、90年代後半から10数年間、撮影や取材のために足繁く通った記憶が蘇ってくる。
2026年5月16日(土)午後7時頃(ニューヨーク現地時間)、午後9時にスタートするイタリア発ラグジュアリーブランド「Gucci(グッチ)」のアーティスティック ディレクター、デムナによる2027クルーズ コレクション「GucciCore」に参席するために、宿泊先のマンハッタンのホテルから僕らを乗せた送迎車は、ショー会場へ向けて出発した。1980年代、顧客のみが専用のゴールドカラーの鍵でプライベートエントランスからアクセスしたという、ニューヨークのフィフス・アベニュー旗艦店の上階に存在したGucci Galleriaと呼ばれる特別な空間へのオマージュとして、エイジング加工を施したレザースリーブに収められた真鍮製の鍵のインビテーションと屋外で開催されるという情報以外、このタイミングでまだ会場は明かされていない。自由の女神が立つリバティ島……セントラル・パーク……エンパイア・ステート・ビル……ブルックリン・ブリッジ……はてしなく、想像は膨らんでゆく。どうやら送迎車は、渋滞に巻き込まれながらマンハッタンの中心に向かっている。気がつけば、前方も後方も近辺の道路はキャデラック・エスカレードやリンカーン・ナビゲーターといった運転手付きの黒塗りのアメリカンSUVで埋め尽くされている。どれも「GucciCore」に招待された送迎車のようだ。そして、ニューヨークを超えて世界の繁華街の象徴と知られる、あの“世界の交差点”に、送迎車は停車した。降車して見上げると、夜空を埋め尽くすほどの眩いネオンサインや巨大なビルボードが立ち並んでいる。そこは、まさかのタイムズスクエアであった。
エントランスゲートをくぐり抜け、抑えきれないほどの高揚感に包まれながら、舞台となる“世界の交差点”で立ち尽くしていると突如、アンビエントなサウンドとともに四方八方の巨大スクリーンに星空の映像が映し出される。サウンドはドラマティックに展開しながら、映像もしだいに夜明けの空に切り替わってゆく。そしてサウンドにビートが重なり、「グッチ」のアーカイブ映像と広告的な映像を組み合わせたビデオモンタージュが……。“世界の交差点”を「グッチ」がジャックした瞬間であった。「Gucci Acqua」、「Gucci Underwear」、「Gucci Viaggio」、「Gucci Automobili」、「Gucci Businesswear」、「Gucci Time」、「Gucci Gym」、「Palazzo Gucci Hotel」、「Gucci Pets」、「Gucci High Jewelry」、「Gucci Life」など、実在するものから架空のものまで、さまざまなプロダクトが登場し、「グッチ」という存在をライフスタイル、美学、そしてひとつのエトスとして描き出していた。
そして、アメリカらしいダイナミックな演出の序章に続いて、いよいよ「GucciCore」のショーの幕が明ける。ピンストライプのスーツをまとった金融関係者やビジネスマン、気負いのないムードでシアリングコートを羽織ってランチへと出かけるマダムたち、ソフトなテーラリングやルーズなデニム姿のスケーターたち、さらにドレスやパンツスーツを優雅に着こなすフィランソロピストやソーシャライトなどが登場し、多様なスタイルが、マディソン・アベニューからブルックリン、ソーホー、ハーレム、そしてフィフス・アベニューまで、ニューヨークという都市の多彩なスタイルを映し出すように、ニューヨークのストリートとまたショーモデルとして登場したパリス・ヒルトンとシンディ・クロフォードという存在が、僕らの世代が見てきた90年代、00年代のアメリカンドリームの記憶と交差してゆく。
機能性よりもフォルムの美しさが追求されたバターのように柔らかなレザーやGGファブリックで仕立てたサーキュラーシルエットのデュベストール、一方では実用性を兼ね添えたテクニカルファブリックや風合い豊かなシアリングを用いたリバーシブルコート、50年代以来のシグネチャーモチーフであるウェブ ストライプはバンドゥトップへと姿を変え、ひとつの大胆なウェアへと進化。また、メンズウェアにもプレシャスな魅力をもたらすクロコダイルの鱗を思わせるスパンコールやビーズフリンジ、フェザー エンブロイダリーを施したオートクチュール的アプローチのルック。テクニカルアウターには、ゴートヘアやシアリングのライニングを施し、実用的なラグジュアリーが体現された。
グッチと乗馬の世界とのつながりを象徴するホースビット ハードウェアは、シャープなヒールブーツのスティラップとして配され、メタルチップ付きの鋭角的なスティレットヒールと呼応。プレシャスレザーのバッグは、インクのように深いカラーやジュエリーを思わせる艶感で仕上げられ、腕時計のストラップを備えたウォッチクラッチも登場。さらに大容量のアンストラクチャード スリングトートバッグには、新たな素材を採用した。
日本からは、俳優の佐野勇斗が「Gucci Primavera」のボルドー地にチャコールグレーのグレンチェックが施されたピークドラペルのダブルブレストジャケット、ブラックのフォーマルパンツ、GGマーモント チャーム付きネックレス、ホースビット付きブラックレザー製のソールミュールを着用し、特別に参席。さらには、マライア・キャリー(Mariah Carey)、ショーン・メンデス(Shawn Mendes)、俳優のジャン・リンホー(Zhang Ling He)、音楽グループALL DAY PROJECT(オールデイプロジェクト)のメンバーTARZZANや、女優のアン・カーティス(Anne Curtis)など、各国のセレブリティがショーに駆け付けた。