NEW GENERATION, NEW WAVE
ABOUT APR, 2025
2000年代初頭に勃興した日本のストリートアートシーンを代表するアーティスト、KAMIの個展「1999」が、SNOW Contemporaryで2月10日(土)まで開催中。
京都出身のKAMIは、1990年代後半にデイヴィッド・エリスを中心に、マイク・ミンやSASU、MADSAKIなどNYや東京のアーティストが集まったアートコレクティブ、Barnstormers(バーンスートーマーズ)に初期メンバーとして参加。現在のストリートアートから発祥したミューラル(壁画)ムーブメントの始まりとも言える同コレクティブでの活動を通して、現在の創作表現に至るヒントを取得する。個人としてだけでなく、2004年にはSASUとのアートデュオ、HITOTZUKIとしてもイギリス URBIS美術館で開催された「Ill CommunicationⅡ」に出品するなど、活動の場を海外にも広げた。2005年には、日本におけるストリートアートが現代美術史に刻まれた記念碑的な大規模展「X-COLOR Graffiti in JAPAN」(水戸芸術館現代美術センター)にも参加。以降は、ビッグメゾンやハワイアン航空とのコラボレーションを手掛けるなど、名実ともに日本を代表するペインター/アーティストとして世界的な評価を確立している。
個展としては約6年振りの開催となる本展は、作家自身が2000年代に向けて希望で満ち溢れていた時期、多くの出会いから現在の曲線を活かした作風が確立されたという1999年を回顧する想いをタイトルに込めた。KAMIの原点となった当時の貴重な資料を公開すると共に新作キャンバス作品約10点を紹介。シグネチャーとも言える「ツボ」に象徴される有機的で力強いラインは、「余白」や「間」といった日本的な要素を取り入れたもので、軽やかなリズムとフローによって周囲の空間を異化しつつも調和させる魅力に溢れている。それは、当時「具象」が主流だったエアロゾルアートシーンに独特な「抽象」を取り入れたエポックメイキングなものであった。即興性やイリーガルな手法含めて、グラフィティの流れを汲みつつも手軽なペンキやマーカーを使い、日本的な要素と西洋のストリートカルチャーを融合させたことは、当時のシーンに強烈なインパクトをもたらしたと言えよう。その唯一無二とも言える作品は、同時代や後続を含めて多くのアーティストからのプロップスを獲得し、今なお大きな影響を与え続けている。
ストリートアートのシーン自体を軽やかに更新し続けるKAMIの原点とその現在地を、本展でぜひ体感してみてはいかがだろう。
会期:開催中(2月10日まで)
会場:SNOW Contemporary
東京都港区西麻布2-13-12 早野ビル404
時間:13:00~19:00
休廊日:日、月、火、祝日
snowcontemporary.com/exhibition/current.html