NEW GENERATION, NEW WAVE
ABOUT OCT, 2024
デニム作品を通してアメリカを支配する強欲さや,
有害な男らしさを考察するニック・ドイル展。
ART Mar 5, 2024
ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、ニック・ドイルの個展「American Blues」が、3月6日(水)よりペロタン東京で開催される。
1983年、ロサンゼルス生まれのニック・ドイルは、デニムをコラージュした彫刻的な壁面作品をシグネチャーとする気鋭のアーティスト。現在はブルックリンを拠点に、アメリカ合衆国のマニフェストのひとつでもある“デスティニー(運命共同体)”という概念のレガシーを強く意識した創作活動を行なっている。なかでも、アメリカ文化に関わる工芸品などを指す“アメリカーナ”の語彙を通して、強欲、過剰、有害な男らしさについて考察を巡らし、アメリカ的な世界観を象徴するロードトリップを作品への入り口に、当国の国民的アイデンティティを構成する徹底的個人主義の持続に疑問を投げかけていく。
作家にとって日本での初開催となる本展では、巨大なデニム作品と不気味な立体作品を展示し、ノスタルジアの危険性と消費主義の変化する環境を強調。マジョリティである白人男性のドイルは、アメリカ国が掲げる“多数から成る一つ”のモットーに対し、人種や階級、ジェンダーの不平等が蔓延る彼の国の現状を常に“自分ごと”として捉えている。ドイルは、問題を抱えたこの国家における自身の悩ましい立場を探究することを選び、学問としての白人学や“有害な男らしさ”の批評から得た情報に基づく芸術表現を追求し続けているのだ。
ドイルとも親交があり、今回の個展に合わせて出版されるモノグラムにエッセイを寄稿したインディペンデント キュレーター兼作家のグレン・アダムソンは、ドイルのアート作品に込められた意図や狙いを次のように指摘する。本物のカウボーイをはじめ、古くはマーロン・ブランドやマリリン・モンロー、現代でもブルック・シールズやビヨンセといった歴代のポップアイコンが着用してきたデニムは、最もアメリカ的な生地といえる。その主成分でもあるインディゴとコットンは、いずれもアメリカ奴隷制下の経済において重要な換金作物であった。(執筆者であるグレン・アダムソンも含めて)その非対称性に多くの人が気づいていないことこそが、アメリカ文化がいかにホワイトウォッシュ(白人化)されているかを示しているのだという。ドイルのアート表現とは、これらの既成事実を消していくために何世紀にも及ぶであろう塗りつぶし作業を、1つずつ進めようとしているのだと論評している。
また、今回のペロタン東京での個展開催に併せて、「アートフェア東京2024」においてソロ プレゼンテーションが行われる。ペインティング、立体作品、プレゼンテーション……様々な表現の発露を多角的に体感することで、ドイルが発するメッセージを読み取ってみてはいかがだろう。
会期:3月6日(水)~4月27日(土)
会場:ペロタン東京
東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1階
開館時間:11:00~19:00
休館日:日、月曜、祝日