NEW GENERATION, NEW WAVE
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専門店ゆえに成せる技。前菜からデザートまで
全皿マッシュルーム尽くしのヴィーガンコース。
LIFE STYLE Apr 4, 2022
“ミートフリーマンデー(Meat Free Monday)”とは、ポール・マッカートニーとステラ・マッカートニーが提唱する地球環境保護を目的としたキャンペーン。週に1度、月曜日だけでも肉を食べない生活を皆が意識することで、畜産飼育における穀物需要の増加とそれに伴う森林破壊や砂漠化、さらには温暖化の要因でもあるメタンガスの発生を少しでも防ごうという啓蒙活動でもある。SWAG H.では、このメッセージに共鳴し、毎週月曜日にベジタリアニズムやヴィーガニズムをはじめとする関連ニュースをお届けする。第43回は、表参道にあるマッシュルーム料理専門店「MUSHROOM TOKYO(マッシュルームトーキョー)」をピックアップ。
2014年4月にオープンした「マッシュルームトーキョー」は、日本初のマッシュルーム料理専門のレストラン。マッシュルームというキノコを使って新たな食を探求し、その美味しさと魅力をより多くの人に伝えて沢山の人たちを幸せにすることをコンセプトに掲げている。お店の代表を務める高橋和久氏が、もともとマッシュルーム専門の卸業を営んでいたこともあり、日本では脇役や添え物的なイメージが強いマッシュルームの魅力を直接食べて伝えてほしいとの想いから、このようなニッチなお店がオープンするに至った。高橋氏の説明によると、マッシュルームは数あるキノコの中で唯一“生”で食べられること、旨味成分がシイタケの3倍もあること、さらに栄養価が極めて豊富であることが特徴で、欧米に比べて日本人が全くその魅力を認識していないことも、専門店を立ち上げる上で大きなモチベーションになったという。
当初は、マッシュルームを全メニューに取り入れたバルスタイルで営業していた「マッシュルームトーキョー」だが、長引くコロナ禍による打撃が新たな方向性へと導くことになる。一時は休業や撤退も頭をよぎる中、コロナ前には多数訪れていた外国人観光客から「マッシュルームのお店ならヴィーガンのメニューもあるんだよね?」と、よく問い合わせがあったことに加え、海外では高タンパクのマッシュルームが肉の代わりとなっていたのを思い出し、本格的なヴィーガンコースの提供をスタートする。ヴィーガンコースは、2ヶ月毎に内容が変わり、前菜からデザートまで全8品で構成される。デザートを含めてすべてにマッシュルームを使い、さらに100%植物性仕様となると、何重にも足枷があるようにも思えるが、調理法や他の食材との組み合わせ、味付けに趣向を凝らすことで独創的かつバラエティに富んだメニューに仕上げているのだ。なお、ノンベジの人向けにメインにはお肉を使ったスペシャルコースを用意しているので、食の趣味嗜好やスタイルが異なる者同士でもひとつのテーブルを囲んで食事を楽しむことができる。何より、単体で食べても満足感があり、肉や魚、野菜との相性も良い、マッシュルームが持つ潜在能力の高さが、メニューの幅を広げているのは間違いなさそうだ。
「コロナ禍で日本人の“食”の意識は変わったと思います」と、高橋氏は語る。お店を運営する中で、より美味しいものを各々のライフスタイルに合わせて自由に選ぶ時代に変わっていくのを強く感じたのだという。氏が取り組んでいるマッシュルームの美味しさを広く伝えることは、翻って肉食や動物性の食材だけに頼らない新たなスタイルの可能性にも繋がる。イノベーティブな代替肉の進化も見逃せないが、今ある食材の魅力を再発見することの重要性を、マッシュルームを通して伝えてくれるからだ。マッシュルーム尽くしのヴィーガン料理には、菜食の大いなる可能性が秘められている。
東京都渋谷区神宮前6丁目2-4
TEL 03-6450-5877
mushroomtokyo.com