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「持続可能な“培養肉”で未来の食卓を変える」
フードテックの最前線に密着したドキュメント。
LIFE STYLE May 19, 2023
培養肉のスタートアップ企業「アップサイド・フーズ(旧メンフィス・ミート)」のCEO兼共同設立者であるウマ・ヴァレティ博士の開発に密着したドキュメンタリー映画「ミート・ザ・フューチャー」が、6月9日(金)より、YEBISU GARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺他にて全国公開される。
クリーン ミート、ピュア ミートとも称される培養肉とは、実際の動物から幹細胞を摂取し、人工的に生成される食肉のこと。主に大豆などを使った植物性の代替肉ベジミートとは違い、バイオリアクター装置の中で栽培される本物の肉であり、食肉産業のシステムそのものを変えるイノベーティブな発明として大きな話題を呼んでいる。現実に目を向けると、人工増加などに伴い、2050年までに世界の肉の消費量が2倍になると予測されている。既に畜産に使われている土地は世界の陸地の半分近くを占め、畜産由来の温室効果ガスは自動車から排出されるものより多い。環境問題の観点から見れば食肉産業自体が大きな岐路に立たされているのが実情だ。
こうした危機的状況の中で現在、世界的に注目されているのが“培養肉”だ。これは環境への影響を排除するだけでなく、従来の畜産業が抱える屠殺(とさつ)という倫理的問題を1度に解決するものである。本作では培養肉の分野における先駆的な存在であり、フードテックの最前線をいく「アップサイド・フーズ」社とウマ・ヴァレティ博士が、培養肉の開発に挑戦する姿を4年間に渡って密着取材。2016年に開発した1ポンド(453グラム)あたり18,000ドル(およそ247万円)する世界初のミートボールから、初めて半分のコストで誕生したチキンフィレなど、未来の食卓を変えるであろう“培養肉”が誕生する様子をつぶさに記録する。
幼少期に友達の家で行われた誕生パーティで、動物が屠殺される光景を見てショックを受けたウマ博士。「誰かの幸せのために命を犠牲にしているのがつらかった」と語る彼は、それから木に生える肉を夢みていたという。そんな彼が作り出した動物を殺さない培養肉は、近い将来、革命的なフードイネベーションを起こすに違いない。なぜなら、マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツやヴァージン・グループの会長であり、実業家のリチャード・ブランソンをはじめ、食品大手のカーギルやタイソン、ソフトバンク・グループなどが、“培養肉”というものが食品として市場に出回ることを確信し、ウマ博士率いる「アップサイド・フーズ」社に投資。今後大きな成長が見込めることを彼らは投資家として予見しているのだ。
本作の監督を手掛けたのは、1990年代から世界中でタイムリーな問題やテーマを取り扱うインパクトのある人物を主体としたドキュメンタリー作品の脚本、監督、制作、撮影などを務めたリズ・マーシャル。動物行動学者であり作家のジェーン・グドールがナレーションを担当し、モービーが音楽を手掛けた。リズ・マーシャル監督は、培養肉について「世界中の人がベジタリアンやヴィーガンになるわけではありません」と前置きした上で、「持続可能な社会を目指すテクノロジーによるひとつの解決策のように思えます」と説明する。また、「この映画は、新しい産業の誕生を捉えている」とも語っており、その歴史が生まれようとする瞬間をぜひ劇場で追体験してみてはいかがだろう。
6月9日(金)より、YEBISU GARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺他にて全国順次ロードショー
監督:リズ・マーシャル
音楽:モービー
ナレーション:ジェーン・グドール
出演:ウマ・ヴァレティ、ニコラス・ジェノベーゼ、エリック・シュルツ、ケーシー・カ ーズウェル、ダニエル・デスメット、マシュー・レオン、マイケラ・ウォーカー、ムルナ リニ・パルヴァタネニ、ブルース・フリードリヒ、アマンダ・リトル他
2020|カナダ|84分|英語・ヒンディー語|原題:MEAT THE FUTURE
配給・宣伝:アップリンク
©2021 LizMars Production Inc.