NEW GENERATION, NEW WAVE
ABOUT OCT, 2024
日本の食材と多彩なスパイス&ハーブを融合して,
モダンに昇華したミドルイースト系ベジタリアン。
LIFE STYLE Apr 24, 2023
“ミートフリーマンデー(Meat Free Monday)”とは、ポール・マッカートニーとステラ・マッカートニーが提唱する地球環境保護を目的としたキャンペーン。週に1度、月曜日だけでも肉を食べない生活を皆が意識することで、畜産飼育における穀物需要の増加とそれに伴う森林破壊や砂漠化、さらには温暖化の要因でもあるメタンガスの発生を少しでも防ごうという啓蒙活動でもある。SWAG H.では、このメッセージに共鳴し、毎週月曜日にベジタリアニズムやヴィーガニズムをはじめとする関連ニュースをお届けする。第90回は東京、広尾にあるミドルイースタンレストラン「Salam(サラーム)」をピックアップ。
2020年7月にオープンした、プライベートオフィスやメンバーズラウンジなど全6フロアからなる複合型施設「EAT PLAY WORKS(イートプレイワークス)」。今回紹介する「サラーム」は、同施設内で17店舗の名店が軒を連ねるレストランフロアの一角に位置する。アラビア語で“平和、平安”を意味する言葉で、日常的な挨拶にも用いられる「サラーム」という店名からも分かるように、中東料理をメインとしたお店。それも伝統的なメニューや調理法をベースにしながら、多彩なスパイス&ハーブと日本の新鮮な農産物を組み合わせることで鮮やかな風味に仕上げたモダンな中東料理である。
レストランの発起人は、かつてニューヨークにある三ッ星レストラン「Jean-Georges NY(ジャン・ジョルジュ ニューヨーク)」のスーシェフを務め、青山にあるサスティナブルグリル「The Burn(ザ・バーン)」の立ち上げにも参加した米澤文雄氏。ひと口に中東料理と言っても、日本人にとってはエリア自体の馴染みが薄く、食したことがない人も多いだろう。中東には日本人の口にも合うバランスがよく親しみやすい味のメニューが数多く存在するという。中でも野菜、豆、胡麻、オリーブオイル、レモンやスパイス、ハーブを多用し、ヘルシー志向のニーズにも即した中東料理は、日本でもっと流行るはずという想いから「サラーム」をオープンしたのだと語る。現在は、米澤氏のエッセンスを引き継いだシェフのレイチェル・ダウ氏によって、多様な食の趣味嗜好を持つ人同士が一緒に食事を楽しめるということを大切に、新たなメニューの開発が進められている。その多様性への配慮はグランドメニューにも見て取れる。「サラーム」では、ヴィーガンやベジタリアンメニューの他に、魚や肉料理を用意。ドリンクメニューも国産クラフトジンやナチュールワイン、カクテルといったアルコール類をはじめ、自家製炭酸飲料やかつて本連載でも紹介した埼玉産のコンブ茶、「_SHIP コンブチャ」など多数取り揃え、幅広いニーズに応える。
中でも白眉なのは、やはりヴィーガン/ベジタリアンメニューだ。ノンベジにとっては、精進料理などの影響から質素でどこか味気ないというイメージも強いが、「サラーム」ではヘルシーかつ満足感のある料理を提供することで、ポジティブな印象に変換したいという。そのため、毎日のように市場に出てくる新たな食材や代替食品を取り入れながら、複雑かつ奥深い味わいや多種多様な食感を表現できるように日々、試行錯誤を繰り返している。初めて訪れたゲストにおすすめしているという中東発祥のコロッケ、ファラフェルをメインに副菜などを盛り合わせた「ファラフェルメゼプレート」や、ナスとゴマのペースト「ババガヌーシュ」といったシグネチャーメニューを口にすれば、ヴィーガン/ベジタリアンへの誤ったイメージも覆されるに違いない。
「サラーム」では、心身の健康や環境面の影響だけでなく、訪れてくれる人たちに「今までと違う野菜の食べ方」という気付きや、「世界にはこんな野菜の食べ方があるんだ」ということを伝えたいという。調理法やテクニック、さらにスパイスやハーブの組み合わせ次第で野菜だけでも十分満足できることを中東料理を通して広く発信しているのだ。その深遠なる世界を「サラーム」で体感してみてはいかがだろうか。
東京都渋谷区広尾5-4-16 EAT PLAY WORKS 1F
TEL 070-4230-9547
salt-group.jp/shop/salam