NEW GENERATION, NEW WAVE
ABOUT OCT, 2024
現地のコミュニティに溶け込み,日常を記録した
奈良美智の写真展「北海道 - 台湾」が開催中。
ART Dec 11, 2023
日本を代表する現代美術作家、奈良美智の個展「北海道 - 台湾」が、タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムにて、12月26日(火)まで開催中。
タカ・イシイギャラリーにおける2度目の開催となる本展では、奈良が2020年から2023年にかけて北海道と台湾の小さな集落で撮影した写真作品約55点を展示する。どちらも旅の中で撮影されたものだが、「北海道」のシリーズでは、2020年から2023年にかけて撮影された現地のコミュニティでの日常を映した作品を展示。一方、「台湾」のシリーズでは、2023年の春の高雄市や近辺への旅の中で撮影された多くの写真の中から、特にランドスケープ作品をセレクトして紹介される。作家の視線を通して何気ない日々を捉えた写真群は、確かにその土地に同じ時間が流れ、人々の暮らしがその場所に根付いていることを強く感じさせる。奈良は写真を撮る行為を「ドローイングと似ている」と表現するように、今回展示される作品は、奈良自身の目あるいはレンズを通した世界の観方を鑑賞者に提示すると共に、作家の感性に直に触れることができるものである。
現代美術作家である前に、人としての奈良にとって「旅」というものは極めて重要なエレメントであり続けるのだという。特に2011年の東日本大震災をきっかけに自身のルーツを探る「旅」をするようになった奈良は、2014年には亡き祖父の出稼ぎ先であったサハリンへと赴き、時代に翻弄された少数民族の人々や風景を撮影したシリーズ作品「SAKHALIN」を発表。加えて、近年では自身のルーツを超え、北海道や台湾の辺境にある集落を頻繁に訪問。北海道の白老町や洞爺湖町に至っては、数年の間に個人的に何度も訪れて、顔の見える規模のコミュニティの中で信頼関係を築き、市井の人々と普通の日常を共に過ごしている。台湾では山岳地帯や小さな街を巡るなど、行き先は様々でも常に旅の中で奈良は自分を構成するものを探し求めているのだ。
本展では、作家の世界的な評価を確立した絵画や彫刻作品ではなく、瞬間的なイマジネーションの発露となる写真表現を通して、奈良美智が旅を続ける理由の一端を垣間見ることができるかもしれない。
会期:開催中(12月26日まで)
会場:タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム
東京都港区六本木5丁目17-1 AXISビル 2F
時間:12:00~19:00
定休日:日曜日、月曜日、祝祭日
入場料:無料