NEW GENERATION, NEW WAVE
ABOUT APR, 2025
写真表現を通して約170年前の現象を紐解く,
石塚元太良の個展「Gold Rush Alaska」。
ART Apr 1, 2024
ドキュメンタリーとアートの間を横断するような独自の作風で活躍する写真家、石塚元太良の個展「Gold Rush Alaska」が、KOTARO KUNAGA 天王洲にて5月18日(土)まで開催中。
本展は、2016年開催の第8回TOKYO ART BOOK FAIRに併せて開催されたドイツ、シュタイデル社によるダミーアートブックアワード「Steidl Book Award Japan」において、石塚のグランプリ受賞により、同社からフィジカルで出版されることとなったアートブック「Gold Rush Alaska」の刊行を記念して開催されるもの。なお、本アワードでは4,000冊にも及ぶ応募作の中からシュタイデルの創業者、ゲルハルト・シュタイデル直接選び、グランプリが決定。石塚のページネーションから物語られるストーリー性を高く評価したのだという。
石塚は近年、様々なモチーフを通して写真による写真空間の再解釈に取り組んできた。19世紀末に世界各地で金が発見され、突如として一攫千金を狙った採掘者たちが集まった「ゴールドラッシュ」という現象を、「歴史として彫塑(*彫刻と塑造を指す言葉で、彫刻の原型となる塑像を作ること)する」本シリーズもそのひとつ。今回展示される作品の舞台はアラスカで、未発表となっていた写真作品14点と、イメージを立体化した写真彫刻作品3点を紹介する。
石塚が大判カメラの先に捉えたのは、ゴールドラッシュ時代の熱狂と、今は無きその語り手たちである。それらは単なる風景写真に留まらず、写真によって“取り残されたもの”を描写し、物語ることで“歴史化”に取り組んだ産物であり、「ゴールドラッシュ」の史実を読み進めるものでもある。石塚は、アラスカでの撮影についてKOTARO NUKAGAのYouTubeチャンネルのインタビューにおいて「(史跡や遺物を見て)現代の景色の中に歴史的遺物が立ち現れてきて驚いてしまった」とも語っており、それは自身がめまいを起こすほどの体験だったと述懐している。
写真表現で伝える寡黙なストーリーテラー、石塚元太良。その作品群が物語る「ゴールドラッシュ」の歴史の一端を本展で体感してみてはいかがだろう。
会期:開催中(5月18日まで)
会場:KOTARO NUKAGA 天王洲
東京都品川区北品川1-33-10 TERADA Art Complex 3F
時間:11:00~18:00
休廊日:日、月曜日、祝日
kotaronukaga.com