NEW GENERATION, NEW WAVE
ABOUT OCT, 2024
オンマ(母親)が作る本場の家庭料理を再現した,
野菜と発酵食品メインのヴィーガン韓国料理店。
LIFE STYLE Oct 31, 2022
“ミートフリーマンデー(Meat Free Monday)”とは、ポール・マッカートニーとステラ・マッカートニーが提唱する地球環境保護を目的としたキャンペーン。週に1度、月曜日だけでも肉を食べない生活を皆が意識することで、畜産飼育における穀物需要の増加とそれに伴う森林破壊や砂漠化、さらには温暖化の要因でもあるメタンガスの発生を少しでも防ごうという啓蒙活動でもある。SWAG H.では、このメッセージに共鳴し、毎週月曜日にベジタリアニズムやヴィーガニズムをはじめとする関連ニュースをお届けする。第68回は、今年8月にオープンしたばかりの野菜と発酵でつくるヴィーガン韓国料理「Yachego(オンマちゃんのヤッチェゴ)」をピックアップ。
池尻大橋駅南口から徒歩1分程の距離にある「オンマちゃんのヤッチェゴ」。現在は、クラフトビール専門店「クラフトビールシザーズ池尻大橋」の店舗を間借りする形で、ランチタイム(11:30~15:00)のみ営業している。“オンマ”とは小さな子供たちが母親を呼ぶ時の「ママ」に近い韓国語(オモニは、大人が母親に対して使う「お母さん」という意味)で、韓国のオンマたちが作るご飯を、多くの人に届けたいという想いが店名にも込められている。なんでも「ご飯食べた?」という言葉が挨拶代わりの韓国では、オンマは家族みんながいつでもご飯をたくさん食べられるように、野菜のパンチャン(おかず)を冷蔵庫いっぱいに常備しているという。
20代の7年間を韓国で過ごしたというオーナーの永川銀珠氏もまた、小さなお子さんを抱えるオンマのひとり。韓国を離れ、いざ日本に帰って韓国料理を探すとどのお店もお肉中心で、オンマが作るような副菜(パンチャン)が充実していないことに気付いた。そもそも韓国料理は焼き肉やサムギョプサルなどお肉のイメージが強いものの、実際には野菜を上手にたくさん摂る食文化が根付いているという。キムチをはじめとする発酵食品やごま油の風味豊かなナムル、高麗人参やナツメといった漢方食材に至るまで、1度の食事で摂取する植物性素材の豊富さは、他の国ではあまり見ることができない独自の食文化である。永川氏は、韓国でいつも口にしていた季節の野菜をふんだんに使ったキムチやおかずを自分で作るうちに動物性の素材がなくても十分美味しいことに気が付いたのだという。そうして出来上がった料理をヴィーガンの友人たちに振る舞っていたことが、お店をオープンするきっかけとなった。そのため、メニューは韓国料理の中でも元々植物性素材メインで作られていたものが中心。肉料理をフェイクミートで代用するやり方ではなく、各家庭で親しまれている野菜たっぷりの家庭料理を紹介する意識でお店を運営している。
ヴィーガンであってもしっかりと食べ応えがあるのが「オンマちゃんのヤッチェゴ」の料理。中でも、スンドゥブチゲやテンジャンチゲは、植物性食材だけではなかなか難しい旨味を補完するために出汁にこだわった。一般的にはアサリや煮干しの出汁を使うのだが、昆布や干し椎茸だけでは唐辛子やニンニクの風味に負けてしまうため、本来出汁にはあまり使うことのない野菜や乾物からとったベジタブル出汁をブレンドしているのだという。お店の営業に加えて、各地で行われるイベントの出店でも評判を呼んでいる裏には、様々な試行錯誤の積み重ねがあったのだ。
本連載ではこれまで、ヴィーガンの中華料理やイタリアンなどを多数紹介してきたが、ヴィーガン韓国料理専門店は今回が初めてである。それだけ一般的な韓国料理に求めるものとして肉料理のニーズが大きいのかもしれない。それでもオンマが作る暖かな韓国家庭料理とおもてなしの精神は、ノンベジも含めて多くの人に伝わるに違いない。
東京都世田谷区池尻2-30-12 OSビルB1F
営業時間:11:30~15:00(L.O.14:30)
www.instagram.com/yache.go