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ホロコーストの真実を明らかにする,
生死をかけた脱走「アウシュヴィッツ・レポート」。
ENTERTAINMENT Jul 28, 2021
本年度のアカデミー賞 国際長編映画賞にもノミネートされたペテル・ベブヤク監督「アウシュヴィッツ・レポート」が、7月30日(金)より新宿武蔵野館他で公開される。
本作の舞台は、第二次世界大戦の最中、ナチスドイツの占領下にあったポーランドのアウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所。同収容所は、ドイツ国元首相でナチスの指導者でもあったアドルフ・ヒトラーが中心となったホロコースト(ユダヤ人への絶滅政策及び大量虐殺)の象徴であり、ユダヤ人をはじめ、障害を持つ人や捕虜、同性愛者などが強制労働や人体実験の対象となっただけでなく、労働に適さない子供や女性、老人の多くはガス室に送られて虐殺。伝染病や餓死などを含めた犠牲者の数は、150万人にも及ぶといわれている。
1944年4月、アウシュヴィッツで遺体の記録係をしているスロバキア人のアルフレートは、同胞のヴァルターと共に、毎日多くの人々が殺される過酷な収容所の実態を外部に伝えようと命がけで脱走を決行。仲間の助けや想いを背負い、ひたすら山道を国境に向けて歩き続けて今にも倒れてしまうほど疲弊するが、奇跡的に赤十字によって救出された2人は、収容所での信じられない実態を告白するという、実話に基づいたストーリーである。
タイトルの「アウシュヴィッツ・レポート」とは、脱走した2人によって収容所の内部やガス室の詳細の詳細などを明らかにした内容をまとめたもの。このレポートが連合軍に報告されたことで、12万人以上のハンガリー系ユダヤ人がアウシュヴィッツに強制移送されるのを免れ、多くの命を救うこととなった。また、同レポートは収容所内部の詳細が克明に描かれていたため、戦後に行われた戦争犯罪を裁くニュルンベルク裁判において、証拠として用いられるなど、勇気ある者たちが起こした行動は、ナチスの蛮行を白日の下に晒し、その後の歴史を動かしたのである。
監督を務めたのはスロバキア出身のペテル・ベブヤク。彼によるとスロバキアでは極右の過激派勢力が議会の議席を獲得するなど、以前より多くの人々がファシズム思想を持つ政権を支持、もしくは容認しており、そんな現状に対して危機感を抱いていたという。そして、今沈黙を保つことは、過激派を支持していることと同じであると考えたペテル・ベブヤクは、先人たちの過ちを繰り返さないためにも、彼らが犯してしまった失敗の物語を描くことが重要だと考え、本作のメガホンをとった。トレーラーのタイトルバックには、アメリカの哲学者、ジョージ・サンタヤナの言葉が大きく映し出される。“過去を忘れる者は必ず同じ過ちを繰り返す”。その言葉は、この作品を通じて監督が伝えたいメッセージであり、明らかに危険な方向に進みつつある現代社会に身を置く私たちの心にずっしりと重くのしかかる。
7月30日(金)より新宿武蔵野館他、全国順次公開
監督、脚本:ペテル・べブヤク 共同脚本:トマーシュ・ボムビク
出演:ノエル・ツツォル、ペテル・オンドレイチカ、ジョン・ハナー他
配給:STAR CHANNEL MOVIES
2020年|94分|カラー|シネスコ|5.1ch|英、チェコ、ポーランド、スロバキア、ドイツ語|スロバキア、チェコ 独 PG-12
原題:Správa 英題:The Auschwitz Report
日本語字幕:川又勝利 後援:スロバキア大使館
©D.N.A., s.r.o., Evolution Films, s.r.o., Ostlicht Filmproduktion GmbH, Rozhlas a televízia Slovenska, Česká televise 2021
auschwitz-report.com