NEW GENERATION, NEW WAVE
ABOUT OCT, 2024
環境危機に対して現代アートは何ができるのか?
芸術作品を通して未来の可能性を探る展覧会。
ART Nov 28, 2023
森美術館の開館20周年を記念したエキシビション「私たちのエコロジー: 地球という惑星を生きるために」が、2024年3月31日(日)まで開催中。
本展は、現在私たちが直面している地球規模の環境危機というものが、諸工業先進国それぞれに特有かつ無数の事象や状況に端を発しているのではないか? という問いから構想されたもの。地球環境に伴う様々な問題や危機に対して、現代アートは何ができるのか?を、インスタレーションや写真表現、メディアアートなど多岐にわたる芸術作品を通して探っていく。参加するのは、世界16カ国、34名のアーティスト。歴史的な作品から本展のために制作された新作まで多様な表現約100点を、四つの章に分けて展観する。
第1章「全ては繋がっている」では、環境や生態系と人間の活動が絡み合う現実に言及。貝殻という有機物がセメントなどの建材に変換されるプロセスを来場者に追体験させる、ニナ・カネルの大規模なインスタレーションに代表されるように、人間や生物のみならず、非生物を含む森羅万象が何らかの循環の一部であり、その循環を通して地球上に存在するすべてのモノ、コトが繋がっていることを再認識させるような作品を展示する。
1950~80年代の高度経済成長の裏で、環境汚染が問題となった日本で制作、発表されたアートを再検証し、環境問題を日本という立ち位置から見つめ直すのが第2章の「土に還る」だ。ここでは、ビキニ環礁で日本の第五福竜丸が被爆した事件を扱った、桂ゆきの絵画作品「人と魚」(1954年)や、土を素材に原爆や反原発を主題とする作品を制作した鯉江良二の「土に還る」(1971年)などを紹介。日本人作家が、環境問題に対してどのように向き合っていたかを、時系列に考察しながら、各時代の代表的な表現方法の変遷を辿っていく。
人類による過度な地球資源の開発の影響を明らかにすると同時に、ある種の“希望”を提示する作品を集めた第3章「大いなる加速」。さらに、アクティビズム、先住民の叡智、フェミニズム、AIや集合知(CI)、スピリチュアリティなど、様々な表現にみられる、最先端のテクノロジーと古来の技術の双方の考察を通して、未来の地球を描く最終章となる第4章「未来は私たちの中にある」も含めて、テーマに即したキュレーションがなされた作品群は、環境問題をはじめとする様々な問題について多様な視点で考えることの重要性を鑑賞者に促すものである。
また、できる限り作品というモノ自体の輸送を減らし、作家本人が来日して新作を制作してもらうことを計画。アーティストを文化の媒介者と捉え、モノの移動よりも、人的なネットワークや繋がりを構築することにエコロジカルな価値を見出した。他にも、身近な環境にあるものを素材として再利用した作品が多く出展されるなど、制作過程から納品方法まで環境危機やそれに付随する問題に目配せを効かせた。会場内の展示デザインに関しても、世界初の100%リサイクル可能な石膏ボードを採用する他、再生素材を使用した建材の使用や廃棄物の削減に努めるなど、できる限り環境に配慮した作りとなっている。
本展の開催にあたり、現代アートやアーティストたちがどのように環境危機に関わり、また関わり得るのかについて思考を促すと共に、美術館というものが鑑賞者同士や作家との間で対話が生まれる場になることを目指すという。まずは、会場に足を運び、それぞれのアーティストが作品に込めたコンセプトやメッセージを読み解いてみてはいかがだろう。
会期:開催中(2024年3月31日まで)
会場:森美術館
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
時間:10:00~22:00(火曜日のみ17:00まで、ただし1月2日、3月19日は22:00まで)
*入館は閉館時間の30分まで
*会期中無休
入館料:[平日]
一般 ¥2,000(¥1,800)、学生(高校、大学生) ¥1,400(¥1,300)、子供(4歳~中学生) ¥800(¥700)、シニア(65歳以上) ¥1,700(¥1,500)
[土、日、休日]
一般 ¥2,200 (¥2,000)、学生(高校、大学生) ¥1,500(¥1,400)、子供(4歳~中学生) ¥900(¥800)、シニア(65歳以上) ¥1,900 (¥1,700)
*専用オンラインサイトでチケットを購入すると( )の料金が適用されます。
*音声ガイド付チケット(+500円)も販売しています。
*本展は、事前予約制(日時指定券)を導入しています。専用オンラインサイトから「日時指定券」をご購入ください。
*専用オンラインサイトは以下となります。
visit.mam-tcv-macg-hills.com
*当日、日時指定枠に空きがある場合は、事前予約なしでご入館いただけます。
*2023.12.30(土)~2024.1.3(水)は[土・日・休日]料金となります。
*本展のチケットで、同時開催プログラムも鑑賞できます。
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
www.mori.art.museum/jp/exhibitions/eco/