NEW GENERATION, NEW WAVE
ABOUT OCT, 2024
現代アート界の巨匠, ゲルハルト・リヒターの
16年振りとなる日本の美術館での個展が開催。
ART May 27, 2022
ドイツ出身の現代美術作家、ゲルハルト・リヒターの個展「ゲルハルト・リヒター展」が、6月7日(火)より東京国立近代美術館にて開催される。
ゲルハルト・リヒターは、ドイツ東部にあるドレスデン出身。1961年に西ドイツへ移住し、デュッセルドルフ芸術アカデミーで学ぶ。コンラート・フィッシャーやジグマー・ポルケらと「資本主義リアリズム」と呼ばれる運動を展開すると、その中で独自の表現を発表し、徐々にその名が知られるようになる。そのあと、イメージの成立条件を問い直す、多岐にわたる作品を通じてドイツ国内のみならず、世界中で評価を確立。ポンピドゥー・センター(パリ、1977年)、ニューヨーク近代美術館(2002年)、テート・モダン(ロンドン、2011年)、メトロポリタン美術館(ニューヨーク、 2020年)など、世界の名だたる美術館で個展を開催し、2012年に開催されたオークションでは存命作家の最高落札額(当時/2132万ポンド=約27億円)を更新するなど、現代で最も高名かつ重要な画家としての地位を不動のものとしている。
日本の美術館での個展は2005~2006年にかけて金沢21世紀美術館、DIC川村記念美術館で開催されて以来16年振り、東京の美術館の大規模な個展は初めての開催となる。本展では、リヒターが手放さず手元に置いてきた財団コレクションおよび本人所蔵作品を中心に、初期のフォトペインティングから最新作のドローイングを含む貴重な作品約110点を展観。今年、90歳を迎えた作家の、60年にもおよぶ画業を紐解く大規模な展覧会となる。
中でも注目は、幅2メートル、高さ2.6メートルの作品4点で構成される巨大な抽象画「ビルケナウ」(2014年)で、ナチスによる残虐行為、ホロコーストを主題としており、ドイツ出身である作家自身にとっても重要な位置を占める大作である。日本初公開となる本作は、一見するとアブストラクトかつ大胆な筆致が目を惹く抽象絵画ではあるが、レイヤードされた絵具の下層には、アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所で囚人が隠し撮りした写真を描き写したイメージが隠れている。リヒターは1960年代以降、ホロコーストというテーマに何度か取り組もうと試みたものの、この深刻な問題に対して適切な表現方法が見つけられず、断念してきたという。2014年にようやくこの作品を完成させ、自らの芸術的課題から“自分が自由になった”と感じたと作家本人が語っているように、リヒターの長いキャリアにおいても一つの達成点であり、転換点にもなった作品といえるだけに、その壮大なスケール感も含めて現地で実際に体感してみてはいかがだろう。
油彩画、写真、デジタルプリント、ガラス、鏡など多岐にわたる素材を用い、具象表現や抽象表現を行き来しながら、人がものを見て認識する原理自体を表すことに一貫して取り組み続けてきたリヒターの集大成をぜひお見逃しなく。
会期:6月7日(火)~10月2日(日)
会場:東京国立近代美術館
東京都千代田区北の丸公園3-1
時間:10:00~17:00(金、土曜は10:00~20:00)
*入館は閉館30分前まで
休館日:月曜(ただし7月18日、9月19日は開館)、7月19日(火)、9月20日(火)
観覧料:一般 ¥2,200、大学生 ¥1,200、高校生 ¥700
*中学生以下、障害者手帳をご提示の方とその付添者(1名)は無料。
*本展の観覧料で入館当日に限り、同時開催の所蔵作品展 「MOMAT コレクション」 もご覧いただけます。
*東京国立近代美術館(当日券)、オンライン(日時指定券)にて販売。
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
richter.exhibit.jp/