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平野歩夢を捉えたスチールや新たな映像作品も!
アリ・マルコポロス「Against the current」展。
ART Jul 7, 2023
ブルックリンを拠点に活動するアーティスト/写真家/映像作家/ブックメーカー、アリ・マルコポロスの個展「Against the current」が、MAKI Gallery 天王洲Ⅱ ギャラリースペースで開催中。
アリ・マルコポロスはオランダ、アムステルダム生まれ。1979年にニューヨークに渡って以来、第一線で活躍するアーティストやミュージシャン、スケーターやスノーボーダー、そして一貫して日々の生活の中で出会った人々や場所を写真と映像作品を通して表現し続け、多様な作品を生み出してきた。キャリア初期には、アーロン・ローズが始めた伝説的ギャラリー、アレッジド・ギャラリーで多数の作品を展示。同ギャラリーは、多くのストリートアーティストを紹介し、当時のファインアートとその定義から外れた様々な表現に大きな区別がないことを世の中に示していた。そこでの出会いをきっかけに、一時的にしか表出せず捉えどころのない概念や事象を作品化する方法に触れたアリ・マルコポロスは、それ以来、ホイットニー・ビエンナーレ(ニューヨーク)、MoMA PS1(ニューヨーク)、 バークレー美術館(カリフォルニア州バークレー)など、名だたる美術館で作品が展示され、国際的な評価を確立。近年は世界各地での個展をはじめ、ブックメーカーとして200冊もの書籍や限定版同人誌を制作するなど、様々なアウトプットで自身の芸術表現を拡張し続けている。
MAKI Galleryにおいて初開催となる本展では、アリ・マルコポロスが2022年10月にスイスのサースフェーにあるスノーボードパークで行った、平野歩夢を含む世界のトップスノーボーダーを撮影するプロジェクトから生まれた新作を展示。映像作品でありサウンドピースでもある「Butter」は、23歳のスノーボーダー、ルーカス・フォスターが、多くのスノーボーダーが集うハーフパイプにおいてただ1人で滑り切る様子を撮影するという野心的な試みの結果生まれたものである。それは、完全に今この瞬間の中にだけ存在し、目の前のことに全身の集中を傾け、あらゆるものを意識しながらも“無”の感覚に到達するライダーの様子をフラットに捉えている。
スノーボーダーたちの日常をドキュメントした代表作のひとつ「Transitions and Exits」(2000)では、華麗なライディングシーンではなく、怪我だらけの身体や青あざでまぶたが腫れ上がった少年たちを抑えたトーンで切り取ったように、マルコポロスは被写体の人生をドラマチックに演出したり、商業的な魅力を纏わせたりすることには全く関心を持っていない。ただその瞬間のありのままの姿を捉えることだけに注力する。その作品は、マルコポロスと被写体が誠実に向き合ってお互いを認め合う、まっすぐな関係性の中から生まれ、その結果としてでき上がったイメージは余計な感傷に浸ることなく、被写体それぞれの内面に深く根差した個性を伝えることに成功している。マルコポロスの作品から生み出されるのは、有名、無名問わず様々な人生の剥き出しのアーカイブと言えるだろう。
アリ・マルコポロスという表現者が傑出したイメージメーカーとして、何を大切にし、何を実現しようとしているのか、その一端を伺い知ることができる本展をお見逃しなく。
会期:開催中(7月22日まで)
会場:MAKI Gallery / 天王洲 II, 東京
東京都品川区東品川1-32-8
時間:11:30~19:00
休館日:日曜日、月曜日
www.makigallery.com/ja/exhibitions/